本研究は、子ども虐待対応の要となる多機関・多職種連携の制度的基盤、要保護児童対策地域協議会の調整機関に着目し、中山間地域のスーパービジョンの実態と課題について明らかにすることを目的に行った。コロナ禍により県および市町村の業務も混乱し、研究者自身も移動や面会に制約を受けることとなったため、当初計画の見直しが必要になったものの、対面でのヒアリング調査実施を質問紙調査に切り替えるなどして、一定程度の知見を見出すことができた。 全国調査の結果を見ても基礎自治体の規模によって専門職(有資格者)の配置率が異なることは明らかとなっている。調査対象地域として設定した岩手県において、要保護児童対策地域協議会調整機関担当者(以下、調整機関担当者)を対象としたアンケート調査を実施した。調査結果では、「上司」についてはほとんどの回答者が「いる」と回答していたのに対し(97.0%)、同じ業務を担当する「先輩」がいると回答していたのは42.4%にとどまっていた。また、自身の成長機会がどの程度担保されているかについての問いに対する回答を5件法(機会が全くないを0、十分な機会があるを5)で求めたところ、その平均値は1.91となっており、低いことが分かった。中山間地域が多く、比較的小規模な基礎自治体の多い岩手県では、調整機関担当者に対するスーパービジョン体制については脆弱である可能性が示唆された。セルフスーパービジョンを展開する上でも研修会などの学びの機会を担保することが望まれる。特に小規模な基礎自治体では兼務であることも多く、回答者からは「研修などへ参加する時間が確保できない」といった回答もあった。
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