研究課題/領域番号 |
20K13769
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研究機関 | 旭川大学 |
研究代表者 |
任 賢宰 旭川大学, 保健福祉学部, 助教 (50827954)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 認知症の人 / 家族介護者 / 介護の過程 / 心理的支援 / 小規模多機能型居宅介護 |
研究実績の概要 |
認知症の人を支える家族介護者の心理的支援について先行研究では、小規模多機能型居宅介護(以下、小多機)の仕組みが有効で、家族介護者を対象とする新たな公的支援システムの必要性が提示された。この先行研究を踏まえた小多機の専門職を対象とした調査研究(JP18H05722)では、小多機における家族介護者の心理的側面を含む支援が有効であることを示した。 本研究は、調査研究(JP18H05722)の継続研究で、「小多機における心理的側面を含む支援の取り組みを深層的に把握」するために、①量的研究で質的研究への承諾を得た小多機専門職のインタビュー調査と②心理的支援に着目した文献研究を計画した。しかし、前例のない新型コロナウィルスの影響で、高齢者の利用施設である小多機の専門職への調査研究は予定通りにできず、文献研究とともに先行研究についてより丁寧な分析を行い以下のような結果を得た。 まず、小多機の利用は、家族介護者が最もつらい時期といわれている心理的第2ステップの利用開始が多く、小多機を利用しながら理想的な心理状態といわれる、心理的第4ステップの〈受容〉に移行していた。また、小多機の有効要因として「安心した地域生活の連続」「理解を得る持続的な説明」「柔軟性に富んだサービス」「最期を支える」「臨機応変な支援」「認知症と家族の相互作用による関係性」「心理的支援への取り組み」「変化する状況へのアプローチ」が示され、小多機が併設型か単独型かによって支援の取り組み方が一部異なっていた。 さらに文献研究では、小多機は地域の中でハブ機能となって医療及び福祉・介護を始めとする各機関の協働を包括的にサービス展開するハブサービスとして役割を果たしているが、小多機の支援は未だに認知度が低く、情報提供や地域、地域住民に向けた周知への働きも十分とはいえず、特に地域住民への周知がより求められていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、認知症の人を支える家族介護者への公的支援システムの構築を図るための基礎研究として行った調査研究(JP18H05722)の継続研究で、①小多機における心理的側面を含む支援の取り組みを深層的に把握と、②介護サービスとりわけ、小多機サービスの利用状況の把握及び介護の過程における心理的変容と親密性と共依存の関係性を分析的に図式化すること、③①②の結果をもとに小多機における家族介護者への心理的側面を含む支援の有効性を検証することを目的としている。 この目的を達成するために、令和2年度は、小多機の専門職を対象とするインタビュー調査と文献研究を計画した。しかし、前例のない新型コロナウィルスの影響で、高齢者利用施設である小多機の専門職への調査研究は予定通りにできず、文献研究とともに先行研究についてより丁寧な分析を行い、小多機の利用によって理想的心理状態といわれている〈受容〉に移行していることと、小多機の有効要因として8つの要因を示した。また、小多機の併設有無によって支援の取り組み方が一部異なっていることが分かった。 また文献研究では、小多機は地域の中でハブサービスとして役割を果たしているが、小多機の支援は未だに認知度が低く、情報提供や地域、地域住民に向けた周知への働きも十分とはいえず、特に地域住民への周知がより求められていることを明らかにした。これらの成果は論文投稿して査読中である。 令和3年度には、「②介護サービスとりわけ、小多機サービスの利用状況の把握及び介護の過程における心理的変容と親密性と共依存の関係性を分析的に図式化―その1」を図るために家族介護者へのアンケート調査を行う。また、「①小多機における心理的側面を含む支援の取り組みを深層的に把握」するためにインタビュー調査を行い、学会発表及び論文投稿等の研究成果の報告していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的を達成するために、令和3年度は、「②介護サービスとりわけ、小多機サービスの利用状況の把握及び介護の過程における心理的変容と親密性と共依存の関係性を分析的に図式化―その1」を図る。先行研究では小多機の仕組みが有効であることが明らかになっている。しかし、先行研究の結果は一部の都市部に限定された家族介護者を対象としていて、地方部における家族介護者のサービス利用と心理的側面を含む支援の検証には至っていない。そこで、認知症の人を支える家族介護者の当事者組織である、公益社団法人「認知症の人と家族の会」の全国47都道府県支部の会員10,841名(2020年3月末現在)を対象に、ⅰ)認知症の人を支える家族介護者の介護サービスとりわけ、小多機サービスの利用状況を把握する。ⅱ)介護の過程における心理的変容と親密性と共依存の関係性を分析的に図式化する。そのために、郵送調査による量的研究を行い、認知症の人を支える家族介護者への心理的側面を含む支援の有効性を検証し図式化につなげる。 また、令和2年度に継続して、「①小多機における心理的側面を含む支援の取り組みを深層的に把握」するために、先行研究において質的研究への承諾が得られた事業所の専門職を対象にインタビュー調査を行う。先行研究では、都市部か地方部か、あるいは単独型か併設型かによって支援の取り組み方が異なっている。そこで、都市部と地方部の単独型14か所及び併設型14か所の28か所についてインタビュー調査を行い、小多機における心理的側面を含む支援の取り組みを深層的に把握する。 さらに、研究の成果については学会発表及び論文投稿を用いて報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、認知症の人を支える家族介護者への公的支援システムの構築を図るための基礎研究として行った調査研究の継続研究で、①小多機における心理的側面を含む支援の取り組みを深層的に把握と、②介護サービスとりわけ、小多機サービスの利用状況の把握及び介護の過程における心理的変容と親密性と共依存の関係性を分析的に図式化すること、③①②の結果をもとに小多機における家族介護者への心理的側面を含む支援の有効性を検証することを目的としている。 令和2年度は、小多機の専門職を対象とするインタビュー調査と文献研究を計画した。しかし、調査の承諾を得ていたものの、前例のない新型コロナウィルスの影響で、高齢者の利用施設である小多機の専門職へのインタビュー調査までは至らず、旅費等の次年度の使用額が生じることになった。 次年度は、計画していた「②介護サービスとりわけ、小多機サービスの利用状況の把握及び介護の過程における心理的変容と親密性と共依存の関係性を分析的に図式化」を図るために、公益社団法人「認知症の人と家族の会」の全国47都道府県支部の会員10,841名(2020年3月末現在)を対象にアンケート調査を行う。また、令和2年度に継続して「①小多機における心理的側面を含む支援の取り組みを深層的に把握」するために、都市部と地方部の単独型14か所及び併設型14か所の28か所についてインタビュー調査を行う。
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