研究課題/領域番号 |
20K13775
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
永野 咲 武蔵野大学, 人間科学部, 講師 (10788326)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 社会的養護 / 児童養護施設 / ケアリーバー / 実態把握調査 / 当事者 |
研究実績の概要 |
本研究では、日本への導入が喫緊の課題である社会的養護措置解除後の実態把握(以下、ケアリーバー調査)のあり方について、①海外の先行例の収集とシステムの検証、②自治体からの提供データの分析・検証と継続調査の実施、③ コホート調査を含むケアリーバー調査の課題と実施要件の検討を行う。この課題遂行を経て、日本におけるケアリーバー調査のシステム構築と制度との循環のあり方について具体的な提案を含んだ考察を得ることを目的としている。 2020年度には、①について、文献レビューと電子的方法による情報収集を計画し、実施した。これまで米国の自立支援サービスを使用した若者たちに対する追跡調査(National Youth Transition Database)について調査を進め、日本子ども虐待防止学会で報告した。 ②および③については、提供データの分析と今後の継続調査実施に向けて、検討が進んでいる。共同の状況についても日本子ども虐待防止学会で報告した。 さらに、コロナ禍によって社会的養護を経験した若者たちの生活状況が危機的な状況であることが推測されたことから、緊急の生活実態調査を当事者参画を目指すNPO法人インターナショナル・フォスターケア・アライアンスと共同で実施し、WEBアンケートで450名からの回答を得た。分析の結果、物質的な不足に危機的状況が伺えるだけでなく、「一般的な家族」を基本として設計された新型コロナ対策において、社会的なつながりの状況や精神的な状況もさらに困難な状況に陥ることが示唆された。こうした結果を、複数の学会やシンポジウムで公表した。また2021年度にはNPOによって継続調査実施の予定であり、②および③の新たな進展が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度となる2020年度は①海外の先行例の収集とシステムの検証においては、先行事例に関する文献レビューおよび情報収集、②自治体からの提供データの分析・検証と継続調査の実施においてはデータの分析と検証、③ コホート調査を含むケアリーバー調査の課題と実施要件の検討では、先行研究の収集とレビューを行う計画であった。研究実績の概要の通り、これらの内容はほぼ予定通りに進展している。 成果報告においては、2020年度は、コロナ禍によって予定していた海外学会が中止となり、報告ができなくなったものの、国内の危機的状況を鑑み、社会的養護のもとで育った若者を対象としたコロナ禍での生活状況調査を実施するなど、社会的要請に応じるような研究を実施し、複数の学会・シンポジウムで報告した。これらを受けて、コロナ禍においても、研究課題はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2年目となる2021年度には、①海外の先行例の収集とシステムの検証においては、英国調査を実施する予定であったが、新型コロナの状況を鑑み、オンライン等でのインタビュー調査を実施する予定である。また、3年目に予定していた米国でのインタビューもオンラインに切り替えた上で先行実施し、3年目に英国・米国への訪問調査を実施する。 ②自治体からの提供データの分析・検証と継続調査の実施においてはデータの分析と検証を行い、結果の報告を行う。また協定自治体との継続調査についても実施を検討する予定である。 ③コホート調査を含むケアリーバー調査の課題と実施要件の検討では、2020年度に実施したコロナ禍による影響調査をNPOと共同し継続して実施する予定であり、2021年4月現在、すでに計画が進行している。
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