研究課題/領域番号 |
20K13777
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
加山 弾 東洋大学, 福祉社会デザイン学部, 教授 (20440000)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 社会福祉法人 / 地域公益事業 / 地域における公益的な取組み / 社会的孤立・排除 / 地域共生社会 / 地域福祉 |
研究実績の概要 |
2023年度は、前年度末に実施したアンケート調査(東京都・滋賀県・青森県の社会福祉法人を対象)の結果を集計・分析し、6月に調査報告書を作成した。調査では、複数の社会福祉法人による地域公益活動の実施状況や課題等について明らかにできた。中でも、実施体制(担当部署・担当者の設置有無、ボランティアの登録有無、会議の持ち方等)やコロナ禍による活動への影響等について、統計的にも有意な結果が導かれた。協力して頂いた3都県社会福祉協議会は連携体制の事務局機能を担っており、調査結果が活動支援の手がかりになると考えている。 また、9月には札幌市で先駆的な地域公益活動を行っている2つの社会福祉法人を訪問し、ヒアリングを行った(光の森学園、札幌慈啓会)。光の森学園は、障害者のグループホーム等を多数運営する法人で、職員や利用者が積極的に地域貢献を行うことで地域との接点を増やし(隠れた目的として、地域からの差別解消の糸口とする)、互恵関係を構築するねらいがある。札幌慈啓会では、特別養護老人ホーム等の職員等が地域貢献を行っていた。例えば、シャトルバスの高齢者の移動手段としての開放、生協との協働による移動販売(買い物支援)、地域の居場所・サロンの実施等は独自的と言える。 また、この機に札幌市社会福祉協議会が運営する「情報センター資料室」で資料収集を行った。道内の社会福祉法人の歴史や地域福祉の歴史、市民生局による公益事業の規定等、貴重な資料を得ることができた。 研究を通して得られた知見については、随時、各地の実践者と意見交換等を行っている。2021年度から社会福祉法で重層的支援体制整備事業が施行されたが、この事業においても地域公益活動は重要な役割を果たすことが期待されており、その関係者とも意見交換を行っている。今年度の成果の一環として、次年度初頭に調査報告会・意見交換会を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度にアンケート調査を実施し、2023年度にその集計・分析を行った。その結果をもとに、2024年度には調査協力者である東京都・滋賀県・青森県社会福祉協議会の担当者を招き、調査報告会および意見交換会を実施することで実践へのフィードバックを図る。 また、先進的な実践を行う全国の事例(社会福祉法人のネットワーク)への視察・ヒアリングを行ってきた。上記の会ではその報告も行い、量・質両面からの点検を行う。 調査結果を精緻に分析することを通し、さらなる研究課題・実践課題の抽出をめざす。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に実施したアンケート調査では、主に社会福祉法人による地域公益活動の実施体制について明らかにすることができた(担当部署・担当者の配置有無、ボランティア登録の有無や規模、連携法人による会議体の有無や開催方法・頻度等)。一方、研究期間を通して行った視察・ヒアリングでは、地域公益活動の実践方法や具体的なプログラム等について把握することができた(制度の狭間の問題等の潜在的ニーズの発掘・解決等)。 調査と並行して、関連する文献・論文・資料等の収集も行ってきたため、それらの資料類や理論と調査結果の照合をより精緻に行い、複数法人による地域公益活動の有用性や課題等について提起していきたい。 このために必要になる調査も適宜行うつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により、予定していた海外の研究者との共同研究が実現しなかったため。2024年度は以下の活動を計画している。 4月 調査報告会・意見交換会/8~9月 イギリスの研究者との意見交換・現地視察/10~11月 4月の意見交換会で出た新たな論点に基づき、小地域単位で組織している地域公益活動について視察・ヒアリングを行い、次の研究のための構想につなげる(近江八幡市・岡北学区、東京都・三鷹市、同・豊島区を検討)。
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