研究課題/領域番号 |
20K13778
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
山本 美香 東洋大学, ライフデザイン学部, 教授 (80383363)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ソーシャル・キャピタル / 孤独死防止 / サードプレイス / コミュニタリアニズム / 新しい創造 / ソーシャルサポート |
研究実績の概要 |
計画段階では、コミュニティカフェに通ってくる高齢者等に対するヒアリング調査を実施し、カフェに通うことでソーシャル・キャピタルがどのように変化するかを把握する予定であったが、コロナ禍でコミュニティカフェが開催されず、当事者のヒアリング調査はできない状態となった。そのため、予定を変更し、コミュニティカフェ運営者側7名に対して「コミュニティカフェの意義、「場」の目的をどのように考えているかに関する意識調査」を実施した。現在、SCATという質的分析法を用いて分析中である。運営者は、コミュニティカフェを「孤独死防止に向けたソーシャル・キャピタルを創造する」ことを目的としていることが明らかになった。運営者側は、明らかに団地内において孤独死が発生している状況を改善することを意識してコミュニティカフェを運営していた。またこれまでカフェには大学生が関わっていたが、このことが団地住民同士の交流に刺激を与え、「目新しさや新しい創造」を生み出す手段となっていることがわかった。ただ、現状ではいくつかの課題があることが認識されていた。まず、住民は「地域における社会資源において自分たちの問題解決ができる」と考えておらず、なかなか「コミュニティカフェの存在が周知されていない」ことや、本来、最もターゲットとしたい「育児ノイローゼになっている子育て世代」や「孤立した人」には活動が届いていないことに対して、このままのコミュニティカフェ運営の方法でよいのかという不安が生じていることが分析より明らかになった。7名全員の分析はこれからであるが、それぞれ意識や目的、活動への関わりの濃度に差があり、それがコミュニティカフェに対する意識にどう影響があるかを分析によって明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先述したように、コロナ禍でコミュニティカフェが閉鎖されたことにより、調査の目的と対象の変更を余儀なくされた。しかし、調査対象地域の協力もあって、利用者ではなく、運営者側がどのような目的を持ってコミュニティカフェを運営しているのか、どのような「場」にしようとそれぞれが考えているかを調査することに変更した。その点では、当初の目的と少し変わったが、研究は、おおむね順調に行えていると評価できる
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、「オンラインコミュニティカフェ」を実施する予定である。団地内の居住者でオンラインによる学生との交流を希望する人を募集し、応募してきた人(主に独居高齢者)と学生との交流を図る。何度かそれを繰り返すことで、意識や生活がどのように変化したか、団地内での他者との関係性に変化が生じたかをヒアリング調査を実施する。コロナ禍で、特に独居高齢者は引きこもりになり、孤立化が進んだといわれている。対面でのコミュニティカフェの再開はまだ望めないことから、二次的手段としてオンラインでの交流を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、コミュニティカフェが開催されず、予定していたヒアリング調査のための調査員などへのアルバイト代などが発生しなかった。また、他のコミュニティカフェへの視察も移動ができなかったことから行えず、したがって費用が発生してない。 2021年度は、団地に居住する独居高齢者や子育て中の母親などに、オンラインによる学生との交流を図り、その後、定期的にヒアリング調査を行って、交流によって意識やソーシャルキャピタルのあり方に変化があったのかを検証する。オンラインによる交流およびヒアリング調査は、2020年度にも実施しており、不慣れな人でもこちらの準備が万端であれば可能なことが明らかになっている。今回も、ICTの操作や団地でのセッティング、ヒアリング調査結果の文字起こしが必要となり、業務委託費が発生する。
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