研究課題/領域番号 |
20K13779
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
福島 里美 日本女子大学, 人間社会学部, 研究員 (70532729)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 基本的信頼感 / 里親養育 / 食生活 |
研究実績の概要 |
本研究でテーマとしている里親養育では、支援者から「試し行動」だとみなされて、受け入れればよいとされている行動が多く、子ども自身が抱える問題や発達との区別がつきにくいことが課題であった。そこで、委託初期に里親が出会う悩みを「試し行動」と「試しでない行動」とに分類し、その対処方法を里親から聞き取った内容を整理・考察し、書籍にまとめた。タイトルは、「試し行動と試しでない行動を乗り越える里親」である。2021年4月には電子書籍でのみ出版したが、高齢の里親も多く、電子書籍は読みにくいとの意見が出たことから10月にペーパーバッグで自費出版した。
11月に、試しでない行動としての食生活に焦点を当てた研究を日本家族心理学会第38回大会にて、口頭発表を行った。発表タイトルは「里親が出会う食生活の悩みと対応」である。本研究は、里親が遭遇する課題から、里親が試し行動とはみなさなかった食生活の課題に焦点を当て、里親養育実践に役立つ情報として整理することを目指した。 分析方法としては、里親への面接調査から、食生活に関する言及を切り取り、KJ法で分析を行った。その結果、食生活の悩みは、<施設の食生活の影響><実家の食生活の影響><食事の量><準備の苦労>の4つに分類できた。心理的な課題だけでなく、子どもの里親委託前の生活環境や生活習慣の違いが、里親家庭における悩みに影響していることがうかがえた。 さらに里親の具体的な対応に関する39の言及を整理すると、<子どもの好みを尊重><食べさせる工夫><体験を増やす><理解を示す>の4つに大分類できた。子どもが経験してきた食生活と、里親家庭の食生活との間に差があったとしても、子どもの背景を否定することなく、子どもを理解し、喜んで食べられるよう工夫しながら食生活を築いていた。里親のこのような日常的な関わりは、子どもの基本的信頼感を育てるのに重要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍のため、表立った対面での調査を行うことができていないが、これまで集めてきた面接データを分析をし、発表をしたり、当事者へ還元できる資料として公表を行っている。 また、ここまでの研究活動への評価から、日本精神衛生学会の研修会講師を依頼され、社会的養護に携わる専門職を対象に研修を行ったり、里親会の研修を行ったりし、支援にかかわる当事者へ研究の成果を還元することができている。
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今後の研究の推進方策 |
実親との関係については、これから分析を行い、発表していく予定である。 また、2022年度も社会的養護にかかわる支援者向けの研修をいくつか依頼されているため、研究成果をフィードバックしながら、現場のニーズを確認し、研究につなげる方向である。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会がオンライン開催されたため、出張費として使用予定だった研究費が残った。2022年度は、国際学会への参加費としての使用を検討している。
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