研究実績の概要 |
矯正施設や受刑者および刑務所出所者に対する固定化されたイメージが、出所者を社会の一員として受け入れ、問題解決を図ることを妨げる一因として指摘されている(e.g., 上瀬, 2016; 上瀬ら, 2017)。上瀬ら(2017)の研究によると刑務所に対する様々な形の接触が多い人ほど、施設への抵抗感が低く、出所者に対する態度も受容的であった。また上瀬(2017)は矯正システムに関する広報の有効性を指摘しており、出所者の現状等の一般人があまり触れることのない情報の提示が出所者支援に対する態度に影響する可能性がある。 2020年~2021度にかけて一般人の刑務所出所者に対する支援への態度を明らかにするために幅広い年齢層を対象に調査を実施した。リサーチ会社を介して20歳~65歳までの男女2400名(男性1200名、女性1200名;平均年齢44.47歳、SD=13.49)から回答を得た。調査内容は①「犯罪者に対するイメージ、②「地域社会での出所者支援に対する支持態度」であった。また、近年の再犯者率の上昇とその背景、政府の取り組みに関する情報を②出所者支援に対する支持態度尺度の前に提示する情報有群と提示しない情報無群を設定し、無作為に参加者を振り分け調査をおこなった。分析の結果、犯罪者に対して否定的なイメージを持っているほど出所者支援に対して否定的であり、回答者の年齢があがるにつれて肯定的である傾向がみられた。再犯や出所者の実情についての情報の影響などに関しては分析途中であるが、出所者支援にあたっては一般人の犯罪者に対する固定化された否定的なイメージを軽減させる必要性や受け入れ先の年齢層を考慮に入れる必要性が考えられたことは今後の支援を考えるにあたって意義のある成果と思われる。今後はなぜ年齢によって差異が生まれたのか、どのような人が肯定的な態度を持ちやすいかなどを検討する必要がある。
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