研究実績の概要 |
矯正施設や受刑者および刑務所出所者に対する固定化されたイメージが,出所者を社会の一員として受け入れ,問題解決を図ることを妨げる一因として指摘されている(e.g., 上瀬, 2016; 上瀬ら, 2017)。刑務所出所者の受け入れへの態度に影響する。そこで本研究は,刑務所出所者への支援に対する態度に影響する要因の検討をおこなった。 2020年~2021度にかけて一般人の刑務所出所者に対する支援への態度を明らかにするために幅広い年齢層を対象に調査を実施した。リサーチ会社を介して20歳~65歳までの男女2400名から回答を得た。調査内容は①「犯罪者に対するイメージ,②「地域社会での出所者支援に対する支持態度」であった。また,近年の再犯者率の上昇とその背景,政府の取り組みに関する情報を②出所者支援に対する支持態度尺度の前に提示する情報有群と提示しない情報無群を設定し,無作為に参加者を振り分け調査をおこなった。分析の結果,犯罪者に対して否定的なイメージを持っているほど出所者支援に対して否定的であり,回答者の年齢があがるにつれて肯定的である傾向がみられた。 2022年度では,前科者の雇用に肯定的な企業・組織とそうでない組織の特徴を明らかにするため,職場ソーシャルキャピタルや組織風土の関連を検討した。20歳~59歳までの企業に勤める男女503名から回答を得た。分析の結果,職場ソーシャルキャピタルが高い職場や年齢層が高い職場では,前科者の雇用に対して比較的肯定的であるという結果が得られた。
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