一般的に、だれかと一緒に食事をするとおいしく感じるといわれるが、共食のどのような要因がおいしさに影響するかは十分に解明されていない。共食は社会的な行為であるため、他者の存在がおいしさに影響を及ぼすことが考えられる。本研究では、他者の存在とおいしさの関係に焦点を当て、(主観的な)おいしさ評価値と生理的指標から、他者との食事におけるおいしさ評価値の違いとそれに影響する要因を解明することを目的とした。 令和4年度は、ヒト脳機能イメージングの手法の一つである脳波計を用いて予備実験(手順の確認等)を行ったが、本研究の手法の特性上ノイズが多く含まれてしまい、必要とするデータを得ることは困難であることが判明した。そこで、近赤外線分光法(NIRS)にて測定を行った。 本研究では、疑似的な他者として目のイラストを用いた。開いた目のイラスト、閉じた目のイラスト、control(点)の3条件下で食事をしながら、NIRSの手法で前頭前野皮質の賦活を観察した。その結果、ベースラインから15秒毎のヘモグロビンの値には変化がみられたが、3条件間においては有意差はみられなかった。また、同時に測定した主観的なおいしさ等の評価に関しても有意差は見られなかった。 この結果から、目のイラストでは食事のおいしさや脳活動の賦活に影響を与えるような疑似的な共食相手にはなり得なかったことが考えられる。しかし、本研究ではイラストの提示方法がパソコン画面の壁紙であったことから、被験者への意識付けが弱かった可能性が示唆された。 先行研究より、共食相手として疑似的な他者を用いること、生理的な指標を用いることは、共食時のおいしさの要因を解明することに役立つと考えられることから、今後はイラストの目より更に他者を連想させるもの(目だけでなく顔全体や写真等)を用いて再検討を行っていく必要があると考えられた。
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