研究課題/領域番号 |
20K13800
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
岩下 華子 東京女子医科大学, 医学部, 准講師 (40742771)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 下痢症対策 / ワンヘルスアプローチ |
研究実績の概要 |
ベトナム北部農村地帯のコミュニティベースで推奨できる予防策として、日常生活で扱う水やトイレに関わる基本的なことが挙げられる。具体的にトイレに関しては、汲み取り式よりも水洗トイレが推奨される。生活用水や飲料水に関しては、地域のインフラの整備状況により様子が異なり、飲料水として雨水を使用することは一般的には汚染が心配され推奨されにくいのだが、本研究地域のベトナムの現地では、雨水を利用している人は水道水を利用している人よりも下痢症の発生報告が少ない。その原因としては、(1)水道水の安全管理は徹底されてはいるものの、停電による断水時の水の停滞による汚染などの弊害が予想されること、(2)雨水を好む現地の生活の知恵が功を奏している可能性があること、を指摘してきた。本来であれば、現地の生活様式と「水の煮沸」などの基本的衛生行動をじっくり観察することに加え、水の汚染の指標としての大腸菌測定を行うことになどにより、下痢症を予防できる現地での秘策を探る予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、人々の生活様式や衛生行動は変化した。感染症の行動変容は良い意味で促された可能性がある。一方で、現地の様々な困難は危惧され、新型コロナウイルス感染症蔓延後であることを加味した重度下痢症を発生させない取り組みを強化することは重要である。そこで、ベトナムだけでなく、ネパールでの下痢サンプルを用いたより詳細な下痢原因微生物の解析等も加える予定である。ベトナムの農村地帯においてはジアルジアとクリプトスポリジウムが人と動物の便サンプルから検出され、下水道が整備されていない地域であり、環境でのコンタミネーションリスクの排除が重要であった。同様の環境下であるネパールにおいても人と動物の便サンプルから下痢原因微生物の検出を行い、環境に配慮したワンヘルスアプローチによる新たな知見を共有する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響は多方面で以前続いている。まず、フィールドであるベトナムナムディン省において、共同研究先である疾病管理センターの関係者が新型コロナウイルスの簡易検査キットの販売価格操作に関わった疑いで拘束されており、現地訪問を見合わせている状況である。また、新型コロナウイルス感染症そのものの影響としては、ベトナムも例に漏れず、現地の人々の生活が変化している。日本では、新型コロナウイルス感染防止のため、「3つの密(密閉、密集、密接)」を避けること、手洗い、マスクの着用などが励行された。ベトナムにおいても同様の行動は強く推奨され、日本以上に厳しいロックダウンなどにより日常生活は一変した。感染症の行動変容に関しては、良い意味で促された可能性がある。しかし、新型コロナウイルス感染症蔓延後の混乱を鑑み、重度下痢症が問題になる集団に特化した対策に集中することも必要な状況である。
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今後の研究の推進方策 |
下痢症対策として、コミュニティで遂行可能な生活様式に密着した情報を収集していたが、新型コロナウイルス感染症蔓延後であることを鑑み、重度下痢症を加味したより有効な情報収集へと変換する。重度下痢症が問題になる要因として新型コロナウイルス感染症そのものも含めた下痢原因微生物の検出も含め、ベトナムでの下痢症研究を基本とし、ネパールでの知見も融合し多角的視点からの下痢症対策に取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症に波及した現地の事情により、ベトナム渡航を見合わせていた。今後は、ネパールでの知見の融合も視野に入れ、新たな展開を予定している。
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