研究課題/領域番号 |
20K13801
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研究機関 | 新潟県立大学 |
研究代表者 |
高橋 あずさ 新潟県立大学, 人間生活学部, 助教 (90782079)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ベタレイン / ビーツ / オカヒジキ / スイスチャード / ORAC |
研究実績の概要 |
本研究では、ビーツなどのヒユ科植物中に含まれるファイトケミカルのベタレイン色素及びフェルロイルアミドの新規抽出方法を確立し、それらによるアルツハイマー病の発生抑制について検証することを目的に行っている。さらに、ヒトがヒユ科野菜を食す際には、調理過程を辿らねばならないため、調理した状態のヒユ科野菜の機能性にも着目し検証を行っている。 研究実施計画では、令和2年度において各種ヒユ科野菜中栄養学的成分及び機能性成分の解析を行うこととしており、計画に沿ってヒユ科野菜中ファイトケミカルの精製方法の検討、ヒユ科野菜の抗酸化能の測定、調理条件がヒユ科野菜のファイトケミカルと抗酸化能に与える影響について調べた。 ヒユ科野菜の中ファイトケミカルの精製方法の検討では、ビーツ中に含まれるベタレイン色素の精製方法について検討を行った。本研究で、ビーツからのベタレインの精製に様々な樹脂で試験した結果、従来方法と異なり、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂を併用する精製方法が最も適当であることが明らかとなった。この方法は、従来方法よりも作業手順が少なく、精製できる色素量も多いため効率よく精製できた。 ヒユ科野菜野菜の抗酸化能について、ビーツ、スイスチャードおよびオカヒジキを調査した。ビーツの抗酸化性を調べた結果、ビーツそのものの抗酸化性も高かったが、圧力鍋、ゆで、電子レンジでの加熱調理後に抗酸化性が高くなることを明らかにした。スイスチャードでは、塩および酢を添加した湯でゆで調理を行い、抗酸化能を比較した結果、生よりもゆで調理を行った方が抗酸化能が高くなることを明らかにした。さらに、オカヒジキでもスイスチャード同様、調味料を添加し加熱調理行った方が抗酸化能は高値を示したが、生のオカヒジキは、生のスイスチャードよりも抗酸化能が高値を示したことから、オカヒジキは潜在的に抗酸化能が高い野菜であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、研究実施計画に従い概ね良好に進んでいる。昨年度実施予定であった、ヒユ科野菜中ファイトケミカルの精製方法の検討、ヒユ科野菜の抗酸化能の測定、調理条件がヒユ科野菜のファイトケミカルと抗酸化能に与える影響については、順調に実験を遂行することができた。なお現在、ヒユ科野菜中のフェルロイルアミドの新規抽出方法について検討を行っている。さらに、ヒユ科野菜中ヒユ科野菜の抗酸化性について、令和2年度に実施した測定方法がORAC法の1種類だったので、現在異なる方法で測定を行う準備をしている。
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今後の研究の推進方策 |
研究実施計画では、令和3年度から4年度にかけて疾病モデルマウスに対するベタレイン色素及びフェノール性アミド化合物の機能性発現について検討を行うとしている。本年度は、老化促進モデルマウスであるSAM-P8を用いて、ベタレイン色素がアルツハイマー病の特徴である学習・記憶能力の低下、脳細胞の保護作用に影響を与えるかについての実験を行う予定である。アルツハイマー病発症の要因の1つに酸化ストレスが挙げられるが、ビーツは高い抗酸化性を持つことを昨年度明らかにしており、ビーツがアルツハイマー病の発症を抑制することが期待できる。本研究でビーツのアルツハイマー病発症抑制に対する発現機構の解明を目指したい。さらに、生活習慣病を有すると認知症の発症率が高まることが明らかになってきていることから、マウスを用いて食事性肥満に対するビーツのメタボリックシンドローム抑制についての実験も並行して行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度で購入予定だった実験動物行動観察システムが、コロナ感染症の拡大により購入が困難だったため、次年度使用額が生じた。 令和3年度は、次年度使用額と翌年度分の助成金を合わせ、実験動物行動システムの購入とそれを使用した動物実験を行う予定でいる。
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