研究課題/領域番号 |
20K13805
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
森井 沙衣子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 客員研究員(研究員) (60387892)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スチームコンベクションオーブン / 過熱水蒸気加熱 / 温度履歴 / 官能評価 / テクスチャー |
研究実績の概要 |
2020年度はスチコンによる炊飯プログラムの検討を行うために、スチコンの設定温度、水蒸気量のみだけではなく、庫内に挿入するホテルパンの枚数、炊飯ホテルパンの挿入段を変えて、炊飯を模したホテルパン容器内部の水温度履歴を測定した。その結果、ホテルパンの挿入枚数によっても炊飯温度履歴が異なることが明らかとなった。2021年度は実際のスチコン炊飯の運用を目的とし、一定条件でスチコン炊飯を行い、テクスチャー測定と官能評価を行うこととした。スチコンは煮物や煮魚、スープなど幅広い調理に使用することが可能である。そこで、スチコンで調理や多種類の炊飯を同時に行うことを想定し、1枚あたり750 gの水を入れたホテルパン9枚と同時に炊飯した。炊飯は1/2ホテルパンに米300 gと加水比1.4倍、1.5倍の水を加え、加熱設定温度150℃、水蒸気量100%、炊飯時間20分、蒸らし20分間の条件にて炊飯を行った。炊飯容器内が98℃に到達する時間は加水比1.5 倍で12.3±0.2分、1.4倍で12.2℃±0.2分であり、ご飯をおいしく炊く条件とされる98℃以上で20分以上の加熱条件を満たしていた。米飯の付着性は加水比1.5 倍の米飯、加水比1.4 倍の米飯で差はみられなかった。米飯のかたさは加水比1.5 倍の米飯では44.21±5.4 kN/m2、加水比1.4 倍の米飯で46.69±8.9 kN/m2となった。テクスチャ-測定の結果と同様に、官能評価の結果からも、加水比1.5倍の米飯は加水比1.4倍の米飯よりも、やややわらかいと評価された。また、加水比1.4倍の米飯は加水比1.5倍の米飯と比較して有意に弾力があった。これらの結果から、スチコンでの同時調理を想定した条件での炊飯においても、スチコンで炊いた米飯は炊飯器で炊いた米飯のおいしさと変わりがないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年はスチコン庫内条件を参考にした炊飯プログラムを運用し、米飯の客観的検討として物性測定、成分分析を行う計画であった。実際にスチコン炊飯の運用を目的とし、スチコンで調理や多種類の炊飯を同時に行うことを想定した炊飯条件の設定を行い、スチコン炊飯を実施した。炊きあがった米飯は物性測定機器を用いてテクスチャーを測定し、官能評価にて食味を評価した。さらに、炊飯条件を変えてスチコン炊飯を行い、官能評価を実施した。官能評価を行った米飯について、成分分析や示差走査熱量分析による糊化特性を測定する予定であったが、測定は次年度に行うこととし、米飯サンプルの調製を現在行っている。以上のことから、研究計画はおおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、異なるスチコン庫内条件が炊飯温度履歴に影響を与えることが示唆され、運用した炊飯プログラムにて調理した米飯の物性測定、官能評価を実施した。2022年度は米飯の成分分析、糊化特性について測定を行う。また炊飯プログラムを変えて調理した米飯の官能評価についても実施する計画である。官能評価の方法等はすでに倫理委員会で審査の上、承認を得ている(兵庫県立大学、受付番号251)。対象者への説明、個人情報等に十分に留意し、官能評価を行い、これらの客観的データと主観的評価を相互的に解析し、過熱水蒸気加熱炊飯の予測モデルの構築を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により、学会における研究結果の発表が難しかったこと、また学会での発表場所が誌上となったことで、旅費を使用しなかった。またスチコン炊飯条件を変えて調理した米飯の官能評価を複数回実施する予定であったが、感染状況により、実施することができなかった。そのため、人件費・謝金、その他の項目の費用を多く使用しなかった。次年度は、これまでの結果から得られた炊飯プログラムによって調理した米飯の官能評価や成分分析、糊化特性などの機器分析を行い、また国際学会に参加する予定である。そのため、謝金やそれらの消耗品の購入、旅費などが必要であるため、次年度と今年度の助成金と合わせて使用する。
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