研究課題/領域番号 |
20K13807
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小川 愛実 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (80844927)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 動作計測 / 日常生活動作 / 在宅見守りシステム / 非接触センサ / 居住空間 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は日常生活中に身体機能を評価可能なシステムの実現に向けて、生体情報や環境情報を含む動的要因が動作に及ぼす影響を明らかにすることである。研究計画は、(1)心理的な影響を取り除いた自然な状態での動作計測が可能なシステムである「見守りインフィル」の実現、(2)見守りインフィルと環境センサの居住空間への導入および生体情報の計測が可能なウェアラブルデバイスを用いた長期的な日常生活動作計測の実施、および(3)取得データの解析による動作への各パラメタの影響解明、の3つのフェーズから成る。 本年度は、非接触センサ、PC、人感センサから構成される見守りインフィルのプロトタイプを製作し、実居住空間におけるデータ取得試験を行い、居住環境に対する設置方法のスタディを数ケースの居住空間において実施した。見守りインフィルに搭載されるセンサはRGB-Dセンサおよび人感センサである。その仕組みは、人感センサに反応があった場合のみ一定時間RGB-Dセンサによってデータが取得されるというシンプルなものである一方で、両センサの設置位置にデータ取得のタイミングや取得データそのものが依存する。本年度は実験に協力いただいた2つの住宅において,特に設置計画の難易度が高い階段におけるセンサ設置位置の検討を行った。居住者のプライバシ保護のため、動線空間のみで計測を行うよう、人感センサの赤外線照射範囲を狭める機構を製作し、特定の位置でのみデータ取得が行われるよう調節した。さらに、実験室環境での計測と異なり、センサに対して居住者の身体の向きに角度がついている状態でデータが取得される場合があるため、このような場合でも関節位置情報が正しく修正されるよう、既存の動作計測システムを修正した。本年度取り組んだ基礎検討と開発は、居住空間内で確実に動作データを取得するために必要不可欠であり、本研究において重要な位置づけである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
先述の通り、2020年度は見守りインフィルの開発および検証に重点的に取り組んだ。一方で、被験者実験を開始できていない状況であり、当初の計画よりも遅れていると判断する。主な理由としては、毎年開催されていた地域高齢者を対象とした運動計測会は新型コロナウイルス感染症の影響を受け2020年度の開催が中止となったことが挙げられ、当該計測会は2021年度の開催も中止が決定しており、現在別ルートでのリクルートを行っている。また感染リスクのため、患者の持つ疾患特有の動作における見守りインフィルの精度検証も先送りとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、地域高齢者を対象とした運動計測会は2020年度の開催が中止となったため、感染症対策と所属機関周辺でのリクルートの準備を進めている。これにより当初の計画よりも計測期間の短縮が余儀なくされるが、解析フェーズは計画通り、2021年11月から開始予定である。引き続き被験者数は15名を目標とし、随時計測を開始予定である。 また、実験室にて若齢者を対象に3次元動作解析装置との同時計測による動作計測システムの計測精度評価を試みたが、センサの仕様上の理由で両システムによる同時計測が困難であることが分かった。精度検証の対象を人による動的な方法から静物を用いた静的な方法に切り替え、再検証に取り組んでいる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、京都府にて毎年実施していた運動計測会が中止となり、さらに参加予定であった学会もオンライン開催もしくは中止となり、旅費の出費が減少したため。 次年度において計測機器の数を増やし、同時計測可能な被験者数の確保に充てる計画としている。
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