研究課題/領域番号 |
20K13820
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
甘 靖超 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (20789044)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 供物 / 祭祀 / 長江流域 / 黄河流域 |
研究実績の概要 |
2020年度は、長江下流域と黄河中下流域の生業関係の祭祀と宗族による祖先祭祀に関する文献資料の収集および先行研究の整理を中心に行った。生業関連の祭祀に関しては太湖沿岸の蘇州市呉江地域、嘉興市桐郷地域の地方誌等の資料により、「養蚕」と「食」に関する項目を収集し、記載に沿って時系列に整理を行った。宗族による祖先祭祀に関しては無錫倪氏、蕩口華氏の家文書等の資料を入手し、近年、春と秋に定期的に行われる宗族祭祀の現状について宗族の代表者への聞き取り調査をオンラインで行った。これらの祭祀は、餅や団子類の米食品、乾麺などの小麦粉の加工品、「豚・魚・鶏」のような肉類、米から作られた醸造酒、根菜類、果物や堅果類などが奉納されると確認できた。また黄河流域の代表的な行事食「麺花」に着目し、山西太原、山東莱州地域の地方神祭祀と供物の「麺花」に関する文献資料を収集し整理した。これまで収集した資料から見えたことは生業、地方神関連の祭祀が1960年代以降に久しく行われていなかったが、近年、地域の観光資源とされ、復活される運びとなった。また経済成長を背景に数百人が参加する大規模な宗族祭祀が再び行われるようになった。一方、都市開発に伴って従来の生業が衰退し、伝統的な生活スタイルをはじめ、祭祀と祭祀関連の食事行動も変化している。こうした伝統の衰退と復活が絡み合うなか、供物の内容や奉納の仕方および供物のもつ文化的意義がどのように変化しているかを考察し、学会発表を行い論文を投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は、研究実施計画に沿って長江、黄河流域の祭祀と供物に関する先行研究と基礎資料の収集および整理は当初の計画通り進んでいる。その一方で、祭祀をめぐる供物の献立・配膳・作法とそれに伴う食事行動における調理・奉納・共食の現状を明らかにするため、実地調査による詳細な一次資料の収集が必要である。しかし新型コロナウイルス感染症の流行により、2020年度に調査対象である中国現地の養蚕祭祀、宗族による祖先祭祀がみな中止となった。また新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、2020年9月、2021年3月に予定していた無錫市、嘉興市、太原市での実地調査も延期を余儀なくされることとなった。このような状況のなかで、2020年度において遅れが発生しており、中国現地での実地調査を次年度以降の課題とする。また新型コロナウイルスの収束時期によっては、今後、研究計画を若干変更する可能性もある。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は前年度に続き、各地域の代表的な祭祀と供物の文献資料の収集を行い、実地調査と今後、地域間および生業別の比較考察を行うための基礎資料を作成する。また基礎資料の作成に加え、調査対象地域における祭祀の実地調査と関係者への聞き取り調査を行う。新型コロナウイルスの感染状況により、予定している実地調査が難しい場合、中国現地の調査協力者と連携して、メールやオンラインでの聞き取りによる調査も視野に入れるなど、フレキシブルな対応のもとに研究を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの流行により、2020年度予定していた実地調査ができなかったため、次年度使用額が生じた。 2021年度は当初、計画している実地調査および2020年度に予定した実地検査を行う予定である。新型コロナウイルスの収束時期によっては実地調査をオンラインに切り替える可能性もある。
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