研究課題/領域番号 |
20K13820
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
甘 靖超 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (20789044)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 供物 / 祖先祭祀 / 地方神 / 長江流域 / 黄河流域 |
研究実績の概要 |
2021年度は、中国黄河流域の山西省、陝西省、長江下流域の江蘇省、浙江省で宗族による祖先祭祀および地方神の祭祀に関する供物のフィールドワークを目的としていた。しかし新型コロナウイルス感染症拡大の状況下で中国への渡航が困難になったため、当初計画していた実地調査ができなかった。 そこで2021年度は黄河、長江流域の調査対象地域の民俗志、地方誌、供物の文化的意義および歴史的変遷に関する論文などの文献調査や既存の供物関連の資料の整理に注力した。その成果としては、中国における餃子食の多様な地域性および餃子の供物・儀礼食としての文化的位置づけに関する研究動向を論じた「中国の『餃子』食文化研究の成果と課題」が『名古屋大学人文学研究論集』5号に掲載された。実地調査のかわりにズームなどオンラインの方法を用いて調査対象地域の関係祭祀の執行代表者を対象にインタビューを実施した。山東省莱州地域の結婚式および新生児の誕生祝の際に行われる祖先祭祀と、江蘇省蘇州市の地方における養蚕関連の祭祀の現状をわかった。これらの祭祀に用いられる麺類、コメ類等の供物のもつ文化的意義と歴史的な変化について考察し論文を投稿する予定である。また中国東南大学外国語学院、西安外国語大学日本文化経済学院主催のオンライン学術会議で講演し、食と祭祀に関する研究調査の意義とあり方について問題提起し、中国現地の学者と意見交換を行い、今後の研究にあたって有意義なアドバイスを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題は、黄河、長江流域の祭祀のフィールドワークと祭祀に用いられる供物の実態究明が核をなすものである。しかし2020年度からスタートした初年度に続き、本年度は新型コロナウイルス感染拡大の状況下で中国渡航が依然として困難であり、当初予定していた中国各地のフィールドワークを断念せざるを得なかった。一方、中国現地では感染予防のため、本研究の調査対象である宗族による祖先祭祀や地方神の祭祀が中止となった。本研究課題の予備的調査から協力を得ている現地のインフォーマントの多くが高齢者であり、オンラインでの聞き取り調査への対応が困難である事情を鑑み、文献調査を中心に研究を進めてきた。こうした当初の計画段階では想定できなかった事態によって、研究の進捗に多分に支障をきたした。そのため、本年度の研究調査が当初の計画より遅れることになった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も新型コロナウイルスの収束が見えない状況にあり、中国現地での調査が可能かどうかは不透明である。研究計画の変更を余儀なくされる可能性がある。 実地調査については、中国現地でのフィールドワークが可能な場合、黄河流域の陝西省、山東省、長江流域の浙江省、浙江省を中心とした地域の調査を行う。実地調査が不可能であった場合は、できるかぎりオンラインでのインタビューを行う。関係祭祀の執行代表者が高齢によりオンライン対応が難しい場合は、比較的若い祭祀の参加者にインタビューをし、文献資料の補完資料とする。また以前に行われた祭祀関連の写真が保存されている場合、現地の協力者にデータをメール等で送付してもらい、それを題材としてオンラインでの聞き取り調査も代替案として考える。文献調査については引き続き、歴史史料・地域史等から、黄河、長江流域の祖先祭祀と地方神の祭祀に関する供物の資料を収集・分析する。そして2020年度・2021年度の研究内容の論文化と学会発表をする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大の状況下、2021年度予定していた実地調査ができなかったため、次年度使用額が生じた。次年度は初年度および本年度に実施できなかった実地調査に使用する予定である。新型コロナウイルスの収束時期によっては実地調査をオンラインに切り替える可能性もある。
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