研究課題/領域番号 |
20K13829
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研究機関 | 駒沢女子大学 |
研究代表者 |
松本 雄宇 駒沢女子大学, 人間健康学部, 助教 (80803262)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | NAFLD / セラミド合成酵素 / 米由来成分 |
研究実績の概要 |
研究目的:近年の研究で、スフィンゴ脂質の一つであるセラミドがNAFLD発症や進行と密接に関係していることが明らかとなり、今後のNAFLD対策を考えるうえでセラミド代謝を中心とした研究の必要性が高まっている。先行研究において、白米や玄米摂取がセラミド代謝の変動を介してNAFLD発症を予防することを示唆する結果を得ているが、NAFLD改善効果とその作用機序については明らかとなっていない。そこで、本研究では米によるNAFLD改善効果とセラミド代謝を中心とした分子機構の解明を目的とする。 研究計画:パルミチン酸やフルクトースを肝がん由来細胞HepG2に添加し、脂肪滴が形成されるかOil red O染色により検討した。また、細胞毒性をWTSアッセイにより検討した。さらに、セラミド合成酵素の阻害剤であるMyriocinを処理して脂肪滴量が変化するか検討した。 試験結果:0.5 mMのパルミチン酸を16~40時間処理すると、細胞内の脂肪滴量の増加と細胞生存率の低下が確認できた。MyriocinのNAFLD改善効果を検討するため、パルミチン酸を16時間処理して脂肪滴を形成させた後、Myriocinを24時間処理して脂肪滴量を検討した。その結果、Myriocinを処理した細胞の脂肪滴量は、パルミチン酸を添加し続けた細胞よりも少なかった。50 mMまたは100 mMのフルクトースを24時間処理すると、細胞内の脂肪滴量の増加が確認できた。さらに、Myriocinを同時に処理することで、フルクトースによる脂肪滴量の増加を抑制できた。これらの結果から、セラミド合成酵素の阻害は、パルミチン酸やフルクトースによる脂肪蓄積の予防・改善に有効であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は脂肪酸やフルクトース処理によるセラミド合成酵素であるCerS6やDEGS1の遺伝子発現量の変化や、米タンパク質加水分解物の効果について検討する予定であったが、所属機関の変更に伴い設備の点検や実験系の再度確認が必要であると判断し、令和3年度はセラミド合成酵素の阻害によりNAFLD発症が予防・改善できるのかを検討することとした。 パルミチン酸を16時間処理して脂肪滴を形成させた後、Myriocinを24時間処理して脂肪滴量を検討した。その結果、Myriocinを処理した細胞の脂肪滴量は、パルミチン酸を添加し続けた細胞よりも少なかった。50 mMまたは100 mMのフルクトースを24時間処理すると、細胞内の脂肪滴量の増加が確認できた。さらに、Myriocinを同時に処理することで、フルクトースによる脂肪滴量の増加を抑制できた。これらの結果から、セラミド合成酵素の阻害は、パルミチン酸やフルクトースによる脂肪蓄積の予防・改善に有効であることが示唆された。 セラミド合成酵素阻害剤のNAFLD発症予防・改善効果について上記の研究成果を得られたものの、NAFLDモデル細胞におけるセラミド合成酵素の発現量について検討できていないこと、細胞内のセラミド量について検討できていないことから、やや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も引き続き、培養細胞を用いて米由来成分によるNAFLD改善効果の検討とセラミド代謝を中心としたメカニズム解明を目指していく。これまでの研究によって明らかとなった点をふまえ、①作製したNAFLDモデル細胞を用いて、米タンパク質加水分解物や玄米抽出物がNAFLD発症予防・改善作用を示すか検討していく。また、②米タンパク質加水分解物や玄米抽出物がセラミド合成酵素に及ぼす影響を検討していく。さらに、NAFLDの病態進行に関与するマクロファージに着目し、米タンパク質加水分解物や玄米抽出物がマクロファージの活性化に及ぼす影響も検討していく。ただし、新型コロナウイルス感染症のまん延により、計画通りに研究を実施することが困難な状況になることも十分考えられるため、臨機応変に研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症による行動制限の影響により、当初予定していた実験動物を用いた条件検討が困難であると判断し、培養細胞を用いた実験に切り替えたこと、また所属機関が変更となったことが理由としてあげられる。令和4年度も引き続き培養細胞を用いた実験で米由来成分によるNAFLD改善効果の検討と、セラミド代謝を中心としたメカニズム解明を目指していく。具体的には、令和3年度に作製したNAFLDモデル細胞を用いて、米タンパク質加水分解物や玄米抽出物による脂肪蓄積への影響と、セラミド合成酵素への影響を検討してく。さらに、米タンパク質加水分解物や玄米抽出物がマクロファージの活性化に及ぼす影響も検討することで、米が持つNAFLD発症・進行に対する多面的な機能を明らかにしていきたい。
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