目的:本研究では米によるNAFLD改善効果とセラミド代謝を中心とした分子機構の解明である。 結果:NAFLDモデル細胞を確立するため、肝がん由来細胞であるHepG2にパルミチン酸(PA)を添加する実験を行った。その結果、0.25 mM、0.5 mMのPA処理で細胞生存率の低下と脂肪蓄積が認められた。NAFLDモデル細胞にセラミド合成阻害剤(MyriocinとFenretinide)を添加したところ、Fenretinideで脂肪滴量の低下が確認された。一方、Myriocinについては一貫した結果が得られなかった。以上より、セラミド合成阻害剤の1つであるFenretinideはNAFLDの改善に有効であることが示唆された。 次に、NAFLDモデル動物(KK-Ayマウスに60%高脂肪食を4週間摂取)を使用して、米タンパク質分解物(RPH)がNAFLDに及ぼす影響とセラミド合成酵素の遺伝子発現に及ぼす影響を検討した。その結果、精巣周囲脂肪重量や肝障害マーカーとして知られる血中ALT濃度の低下が認められた。さらに、肝臓のセラミド合成酵素(CerS6、DEGS1)の遺伝子発現量の低下が認められ、RPHの肝臓におけるセラミド合成阻害作用が示唆された。一方で、肝臓中のトリグリセリド量に変化は認められなかった。HepG2を用いてRPHの細胞毒性を検討したところ、0.6~1.2 mg/mlの濃度で細胞毒性を示さなかった。PAとRPHを同時に添加するとPAによる脂肪滴量の増加が抑制される傾向を示した。またRPHの前処理により、PAによる細胞死が抑制される傾向を示した。一方、NAFLDモデル細胞にRPHを添加しても脂肪滴量に変化は認められなかった。これらの結果から、RPHはPAによる脂肪蓄積や細胞死の予防に有効であることが示唆された。
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