研究課題
学校の食物アレルギー対応給食におけるインシデント・アクシデントの事例分析に関して「対応給食提供マニュアル」の実働状況及びインシデント・アクシデント調査と事例原因となった食物抗原の分析と患者の重症度の関連性について検討した.まず,大分県地域保健協議会の「大分県版学校・幼稚園における食物アレルギー対応の手引き」の改定を行った.次に,その実働状況とインシデント・アクシデント調査を行った.最も多かったのは「配膳の取り違え」であり,発生後はインシデントで収束したか,無処置で回復していた.対応に苦慮する事柄は「食物アレルギー児の集団生活内での行動管理」であった.午前中の牛乳提供時のトラブル,昼食や間食時に患児が他の園児の食物を摂取するなどの事例があった.一方,原因不明,あるいは本来原因食物でなかった食物による症状誘発もあり,有事の受診体制整備が必要と考えられた.確認や複数チェックの怠り,保護者のチェックミスによる事例も少なくなかったことから,OJTやOff-JTの定期的実施やミスサポート体制,保護者の負担軽減が望まれた.さらに,食品種が多彩であり対応給食で苦慮する魚アレルギーの摂取状況について横断的研究を行った.専門病院に受診する患者では,「症状あり」と回答した魚種はサケ,タラ,タイが多く,ツナ缶詰などの加工品は「症状なし」の回答頻度が高かった.数量化Ⅲ類による魚種間の関連性や原因魚数別の魚種内訳を検討したが,魚の系統的分類や筋肉の色,原因魚の傾向はみられず,総務省調査の魚類摂取量と発症頻度とはパラレルではなかった.また,加工品は「水さらし」操作によるパルブアルブミンの溶出や加圧加熱殺菌処理による症状減弱の可能性が示唆された.患者から詳細な問診をとり,摂取可能な魚種を提供することが必要と考えられた.
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別府大学紀要
巻: 65 ページ: 207-213
別府大学大学院紀要
巻: 24 ページ: 93-100