研究課題/領域番号 |
20K13835
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
大島 千尋 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(長崎), 任期付研究員 (60824357)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 水産発酵食品 / 食中毒 |
研究実績の概要 |
本研究では、水産発酵食品の食中毒リスクを明らかにすることを目的に、水産発酵食品の微生物叢解析及び食中毒菌による汚染実態、食中毒菌の毒性評価について研究を行った。 はじめに、昨年度に引き続き水産発酵食品の菌叢および食中毒菌汚染実態調査を行った。本年は、特に塩と原材料となる水産物のみを使用した水産発酵食品に着目した。これらの食品は塩分濃度がいずれも18%以上と高く、また水分活性は0.83を下回っていた。 次に、本年度の調査に用いた水産発酵食品について、菌叢解析を実施した。菌叢解析の結果、水産物と塩のみを用いて製造された塩辛からは、ほとんどのサンプルでStaphylococcusが最優占種として検出された。一方、食品添加物や調味料を加えている塩辛においては、Pseudomonas属、Lactobacillus属、Rothia属の細菌が優占していた。 続いて、本年度に調査した水産発酵食品についても食中毒菌による汚染状況を調査した。調査した食品のうち2つの塩辛から新たにB. cereusが検出された。そのほかの食中毒菌は検出されなかった。また、分離されたB. cereusの毒素関連遺伝子の保有状況を調べると、すべての株で下痢性毒の産生に関連する遺伝子を保有していることが明らかとなった。中には、非溶血性および溶血性エンテロトキシンの遺伝子を保有している株も分離された。一方で、セレウリドの産生に関連する遺伝子を保有する株は分離されなった。最後に、昨年度の分離株と合わせてMLST解析を行い、STを決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの感染症の影響により海外の水産発酵食品の調査が進まず、それらと国内の水産発酵食品との比較ができなかったため。分離された食中毒菌については、性状や毒素産生能、遺伝子型の解析を進めたが、食品中での毒素産生能に関する評価系の検討に時間を要しており、分離した食中毒菌の食品中での挙動調査に着手できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、分離されたB. cereusのMLST解析結果をデータベースと照合し、日本国内で臨床検体や食品から分離されたB. cereus、および海外で分離されたB. cereusと比較することで、水産発酵食品に由来するB. cereusの特徴を調べる。さらに、様々な水産発酵食品中で分離したB. cereusが毒素を産生する可能性について研究し、水産発酵食品において本菌が食中毒の原因となりうるのかどうか考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、東南アジアの水産発酵食品と国内の水産発酵食品を比較するための、調査、解析が本年も実行できなかった。そのため、予定の旅費および調査に使用する試薬等の消耗品費、解析費用が使用できなかった。 次年度も国内で入手可能な検体やデータを利用して研究を遂行する予定であり、そのための消耗品費、解析費用として使用する。また、本年度は全ゲノム解析を実施しなかったが、次年度は分離株のうち代表的な株について解析する予定である。
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