研究実績の概要 |
本研究では、水産発酵食品の食中毒リスクを明らかにすることを目的に、水産発酵食品中における食中毒菌の汚染実態を明らかにし、また、分離された食中毒菌の毒素産生能を評価して水産発酵食品においてこれらが食中毒の原因となりうるのか検証した。 本年度は、これまでに引き続き水産発酵食品における食中毒菌の汚染実態調査を行い、新たにBacillus cereusを分離した。これまでの調査の結果、水産発酵食品からセレウリドを産生するB. cereusは分離されなかった。一方で、すべての株が非溶血性もしくは溶血性エンテロトキシン産生にかかわる遺伝子を保有していた。これらについてエンテロトキシン産生能をラテックス凝集反応を用いた検査キットにより測定した。その結果、遺伝子を保有している株の70%がエンテロトキシンを産生した。 最後に、エンテロトキシン産生株について、増殖可能な温度および水分活性(Aw)の範囲を調べた。その結果、水産発酵食品から分離したB. cereusは、標準株を含む他の分離株よりも低い水分活性で増殖し、最も低い場合、Awが0.935でも増殖した。Awが0.922未満の場合はすべての株で増殖が確認されなかった。また、8, 10, 15, 20, 30℃で培養した結果、Awが1.0の場合は10℃、Awが0.935の場合は15℃以上の温度で増殖が確認された。本研究でエンテロトキシン産生株が分離された食品には、Awが0.941、保存温度が記載されていないものがあり、本食品が低温管理されなかった場合にはB. cereusが増殖する可能性が考えられた。このことから、水産発酵食品においては、低Awに耐性を持つ株が存在することに留意し、塩分等によりAwを調整する、保存条件を明確にする等して、B. cereusの増殖を抑制する必要があると考えられた。
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