近代日本における林学の高等教育は、東京山林学校(1882年設置、1886年東京農林学校に改組、1890年農科大学として帝国大学に合併)設置に始まる。次に、札幌農学校が「森林科」(1899年設置、1905年「林学科」、1910年「林学実科」に改称)を付設し、1907年設置の東北帝国大学農科大学には林学科が置かれた。 札幌農学校及び東北帝国大学農科大学付設の林学科の卒業生は、農商務省山林局の大小林区、宮内省帝室林野局管理の北海道所在の御料林、北海道庁、外地の朝鮮総督府や樺太庁などで森林の管理に従事し、多くは「技手」を務めていた。 東北帝国大学農科大学林学科卒業生の専攻分野は、森林経理学、造林学・森林保護学、森林利用学に偏っており、教授がいない理水及び砂防工学の専攻者は2名に留まった。卒業後、教官として母校に留まった卒業生は森林経理学や造林学・森林保護学の専攻者であった。 2022年度は、林学科在学中の学びについて検討するため、学科目に着目した。林学科を備える東京帝国大学農学部、東北帝国大学農科大学(1918年より北海道帝国大学農学部)、九州帝国大学農学部(1919年設置)、京都帝国大学農学部(1923年設置)の学科目は、1919年東京帝国大学農学部林学科の学科目の変更を画期として、学科目をほぼ必修科目が占める1919年以前と、選択科目が組み込まれる1919年以降に分けられる。1919年以前の東北帝国大学農科大学林学科の学科目を、先行する帝国大学農科大学・東京帝国大学農学部林学科と比較・検討すると、東北帝国大学農科大学林学科の学科目は、東京帝国大学農学部林学科の学科目を基に編成されたが、1910年、1913年に改正を重ねるにつれて、札幌農学校以来の「殖民学」、昆虫学を専門とする松村松年による「森林昆虫学」、新島善直による「森林美学」等、東大には見られない科目が増加することがわかる。
|