本研究の成果は、以下の3点にある。 第1に、オンラインによる研究会を組織し、教師同士学び合う場を構築したことにある。新型コロナ禍は、申請時に想定されていなかった事態だった。その中でも、学校外の教師とのつながりが、自身の教室実践の再構築をエンパワーすることが見えてきた。 第2に、新型コロナ禍にあっても対面での授業研究会を開催する意義の一つに、教師の自律性、校長の自律性のエンパワーがあることを見出したことである。新型コロナ禍に置かれることで見えてきたことは、教育実践が根源的に抱える複雑性に対峙する際の活動の構成のされ方である。語りを通して見えてきたことは、校長と教師は、教育活動の制限を記載した通知、マスメディアを中心とした情報の中で、限られた選択肢の中から行動することを強いられようとしていた。対面での授業研究会の場に、外部の助言者、行政担当者(指導主事)、他校からの参加者があったことが、可能性を探り合い、自ら挑戦し、実践する機会を創り出した。 第3に、校外の授業研究会への参加をきっかけとした、新人期の省察経験を描き出すことができたことにある。多くの研究が明らかにしてきたように、新人は「白紙」状態におかれているのではない。日記の叙述の分析から見えてくるのは、新人が多くの「規範」にしばられ、実践の自由度を狭めていく様相である。子どもの事実を見て自身の実践をつくるという省察様式から疎外されている。この研究により、新人教師への支援については、共に子どもの事実を見ることから始めることの有効性が示唆された。
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