研究課題/領域番号 |
20K13841
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
児島 博紀 富山大学, 学術研究部教育学系, 講師 (50821542)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 教育機会の平等 / J. S. コールマン |
研究実績の概要 |
本研究は英語圏における〈教育機会の平等〉概念の展開や変遷について、哲学的な観点から検討し明らかにしようとするものである。2020年度は本研究の初年度であり、この概念をめぐる論争の出発点とも言える、米国の〈教育機会の平等〉論争にとくに焦点化して研究を行った。より具体的には、社会学者J. S. コールマンの言説を中心的に検討した。その成果は、第63回教育哲学会大会(10月18日)のラウンドテーブルにて報告を行っている。 検討の結果明らかになったことのポイントは大きく二つある。一つは、コールマンの議論は〈結果平等主義〉を導入したものとしてこれまで評価されることがあったが、それとは異なる側面が見出された点である。より具体的には、従来の評価では彼の議論は平等主義的な立場に立脚するものとして肯定的に言及されることがあったが、実際には彼の議論は効率性概念などとの結びつきのほうが強いのではないか、ということである。もう一つは、コールマン自身の議論と彼が主導した調査報告『教育機会の平等』(1966年)の記述との間で微妙な差異が見出された点である。調査報告は政策的含意として、人種的に統合された学校の役割をクローズアップさせることになったが、コールマン自身の議論は教育機会の平等の目的と統合学校の目的とを峻別するものであった。この点で、彼自身の主張と調査報告書の記述との間にはわずかながら緊張関係が見出されるのである。以上のことは、〈教育機会の平等〉の目的やこの概念の出自と変遷を再考する上でも、重要な示唆を与えるものではないかと考えられる。 次年度は、以上の検討を論文化して総括するとともに、英国における〈教育機会の平等〉概念の調査を進めることで、さらに総合的な検討・考察を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は、研究実績の概要にて記した検討結果を得られたものの、全体としてコロナ禍の影響による多忙化のため、研究活動に十分に集中できなかった。その結果、研究結果の論文化作業が残されていることや、業績の発表数に鑑みて、遅れていると自己評価せざるをえないと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
研究業績の概要に記した内容や、当初の研究計画をふまえて、2021年度はとりわけ以下の点を中心にして研究を遂行する予定である。 1.2020年度の研究結果の論文化作業を行うことで、総合的な考察と成果発表を行う。 2.研究計画として2021年度に予定していた、英国における〈教育と不平等〉論の研究に着手し遂行する。 3.本研究を遂行する上での土台となるような、基礎的研究(具体的には、申請者が現在携わっている倫理学・政治哲学関係の翻訳プロジェクトの刊行など)を並行して行い、その相乗効果によって本研究の活性化をはかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により、学会や研究会が軒並み中止もしくはオンライン開催となったため、出張による旅費を一切使用しなかった。そのため、物品費に予算額よりも多く使用したものの、予算を全額使用するには至らず、結果として次年度使用額が生じた。 使用計画としては、移動制限が解除されれば出張費として用いるほか、図書購入のための物品費として用いることで研究遂行の推進に努めるつもりである。
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