2023年度は、新たな研究知見を国内の学会誌に投稿するとともに、本研究において達成した成果を広く普及する活動に取り組んだ。具体的には、アメリカにおける科学的探究の指導について、科学教育を軸とした教科横断型のプロジェクト学習の理論と実践について論点に即して検討した。この中で、科学的探究の指導において科学的概念や科学的実践、領域横断的概念を子どもたちが身につけるだけでは不十分であり、それらを支える言語能力を子どもたちが身につける必要があることが明らかになった。とりわけ、言語教育を科学教育の中に位置づけることで、言語教育に目的を与え、生きた文脈でこれらの能力を発揮することが試されるような授業が設定されるとともに、教育課程を通してそれらの能力を系統的に高めていくことが企図されていた。このような知見を学会誌に投稿し、採択された。 他方で、この4年間の研究の成果をもとに2つの学会のシンポジウムや中間研究集会において発表した。まず教育目標・評価学会では、日本におけるスーパーサイエンスハイスクールの評価基準づくりの取り組みについて、アメリカの科学的探究の指導と評価の事例をもとに批判的に検討した。高大連携が叫ばれる中で、高等学校において科学者のように探究する活動が取り入れられることがあるが、その是非について批判的に分析を行った。次に、日本カリキュラム学会では、アメリカの科学的探究から科学的実践への展開について、特にアメリカのスタンダード(次世代科学教育スタンダード)の議論に即して発表を行った。加えて、アメリカでは科学的探究力を育成することに向けて、スタンダードレベルで言語教育のスタンダードとの接続を位置付けており、これも踏まえて指導やカリキュラム、評価方法を設定していたことにも言及した。
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