本研究の目的は、地方自治法とその特別法である地方教育行政の組織及び運営に関する法律における法令・制度上と運用上の異同を明らかにし、地方自治制度の視点から教育委員会制度の意義と教育行政体制のあり方を再検討することである。新型コロナウイルス感染症の影響及びそれに伴う研究上の制約により、研究方法を一部修正し、研究期間を1年度間延長して研究を実施した。また、最終年度は、研究代表者の職場の異動に伴い、研究環境や資料を速やかに整えたうえで研究成果の取りまとめを進めた。 最終年度は、過去3カ年の調査研究の資料及びデータの分析を進めた。加えて、文部科学省「「令和の日本型学校教育」を推進する地方教育行政の充実に向けた調査研究協力者会議」の審議を毎回傍聴した。最終報告書に盛り込まれた、小規模自治体への対応及び広域行政の推進のための方策それ自体は、過去の答申や報告書と比較して目新しさはない。しかし、都道府県の支援に加えて、自治体間連携の取り組みについて具体的な方策が盛り込まれたことが大きな特徴といえる。他方で、実効的な地方教育行政体制の充実に繋げるためには、今後の国の対応が肝要になる。報告書は、小規模自治体の研修行政体制の強化を主眼に置き、事例の把握創出、担当者の情報ネットワーク・空間づくりを提起しており、法令・制度変更にまでは至っていない。ただし、調査研究協力者会議の審議過程では、法令上の課題や限界について言及される場面があった。会議の性質上、文部科学省の所掌業務範囲内の議論であり、地方自治法との連関や教育委員会制度(地方教育行政制度)を超えたテーマを深めることは難しいといえる。
|