最終年度は、共同学校事務室を核とした地域単位の学校財務経営を展開している愛媛県宇和島市、現金前渡及び返納の仕組みを備える石川県金沢市の学校単位の学校財務経営について調査を行うことができた。これにより、改めて学校財務に関わる自治体制度の影響力の重要性がわかるとともに、その下でリーダー的役割をもつ学校事務職員の存在が学校財務経営の有効性を左右することが明らかとなった。 研究期間全体を通じ、学校事務職員が複数配置となっている大規模校や、公費予算が潤沢な小規模校などの調査研究を通じ、学校財務経営を実質化させるための自治体制度のあり方と共に、校内における管理職による学校財務の促進、構成員である教員の学校財務への理解、参加が重要であることが明らかとなってきた。そのために、学校財務経営を主導する学校事務職員は、校内外において学校財務に関わる研修を行う機会を獲得し、それへの理解を促す工夫をしている。そして、「私費負担軽減」「公費の有益適切な執行」などの論理規範が教職員の間で共有されている。 そしてまた、4年間にわたる研究期間であったことにより、学校財務経営を主導した事務職員の異動後において、学校財務経営がどう変わるかについても実態を聞くことができたことは大きい。学校財務経営が実質化したところでは、経営の枠組みが整えられているため、それを主導した事務職員が異動したとしても、すぐには学校財務経営は形骸化しない。学校財務経営が実質化した場合には、属人性を脱却することも可能であるということが明らかとなった。
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