本年度は、日本の学習指導要領や、体育の目的・目標の変遷を中心としつつ、学力を育てる体育カリキュラムの課題の整理を行った。 体育カリキュラムの課題としては、2010年代以降に盛んに議論をされているコンピテンシー育成の議論や、次の学習指導要領改訂に関して指摘されているカリキュラム・オーバーロードの問題(教える内容が過多になり、子どもや教師、学校に負担がかかること)などを踏まえて整理した。結果として、体育においてもオーバーロードの問題が起こりうること、コンピテンシー育成の流れから学ぶべきものがあること、特に「概念」などを軸として体育カリキュラムを構想していくことの重要性について考察した。また、新たに学力を形成していくカリキュラムを考えるにあたって、近年の国際バカロレアにおける取組などに学ぶとともに、従来のスポーツ教育の理論から学ぶなど、何を参照すべきかについて検討した。 また、到達度評価に関する研究を踏まえつつ、体育の教科内容の体系化と、体育の授業づくりの関係についても検討した。結果として、体育科におけるパフォーマンス評価を模索することの重要性を改めて確認した。また、目標づくりをしていくことによって、体育科の学力を実質的に保障することや、スポーツにかかわる権利との関係で目標を設定していくことが重要であることを整理した。 これらの研究と関連して、体育にかかわる諸科学と、体育カリキュラム論との関係が新たな問題として浮かび上がる。この課題の検討は今後の課題である。
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