本研究は、米国における校長の資質・力量概念の変容とそれに伴う評価制度や職能成長システムの動態を、学力テストと厳格なアカウンタビリティに基づく連邦主導の改革の展開において明らかにすることを目的としている。具体的には、1980年代以降の連邦政策で校長に必要とされてきた資質・力量概念の変遷を明らかにするとともに、連邦政策を契機として各州で進展する校長の評価制度構築の動態と課題、評価制度と連動する職能成長システムの実態を明らかにし資質・力量概念の変容との関係を分析することを研究課題としている。 最終年度となる本年度も昨年度に引き続き、インターネットを通じて入手可能な文献や規程等をはじめとする連邦・州政府文書等の精査により、各州の評価制度の法制化と職能成長システムの整備状況についての整理を行った。また、連邦政策に伴って校長評価制度を導入したニューヨーク州とカリフォルニア州を中心に、制度の導入過程およびその特徴と課題、校長評価と連動して行われる校長の職能成長システムについて事例分析を行った。学力達成に対する影響度を観点とする新たな評価制度の導入や、それに伴う管理職の人材の流動性の高まりといった状況が看取された。また、新たな人材を大学院等を経ない早期の養成プログラムであるオルタナティブ・ルートによって確保される仕組みの導入が確認された。合わせて評価結果に基づく段階的な研修制度の構築が進められていることが明らかとなった。なお、本年度の研究成果の一部は関連学会での発表および論文投稿などを行う予定である。
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