本研究は、組織レジリエンスを学校現場に応用した「小学生用学級レジリエンス尺度」の開発を目標とし、以下の3つの研究を実施した。 研究1:小学校教員を対象に学級レジリエンス事例の収集を目的とした。株式会社マクロミルに登録されているモニターのうち、小学校4-6年生の担任経験がある者116名から協力を得た。これまでの小学校4-6年生の学級経営の中で、トラブルや難しい場面に対応できる学級にするために、意識していたことや実際に取り組んでいたことに対する自由記述を求めた。その結果、困った時に助け合える関係を構築する、お互いが褒め合えるようにする、暴言・暴力は冗談でも禁止する、などの記述が多くみられた。 研究2:小学生を対象に学級レジリエンス事例の収集を目的とした。小学校4-6年生13名に①「あなたのクラスでは、みんなで仲良く過ごすためのルールや約束はありますか?」、②「あなたのクラスの雰囲気が悪くなったときや良くないことが起こったとき、あなたのクラスで何かしていることはありますか?」などのインタビューを行った。その結果、①については、「暴力をふるってはいけない」「困ったことがあったらまわりの人に相談する」などの回答が得られ、②については、「クラスで出来ていない/良くないことを確認して、直せそうなことをみんなで考える」などの回答が得られた。 研究3:研究1、研究2の結果を踏まえ、小学生用学級レジリエンス尺度の作成を目的とした。調査協力者は、全国の小学校4-6年生の児童206名ずつ計618名であった。探索的因子分析を行った結果、24項目2因子構造を採用した。第1因子は「学級生活支持因子」、第2因子は「他害予防因子」と命名した。2因子ともに十分な信頼性が確認された。また、エゴ・レジリエンス、学級適応感、ストレス反応との相関関係から、小学生用学級レジリエンス尺度の妥当性を支持する結果が得られた。
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