最終年度となった2023年度は、残された課題に関する検討を行なうとともに、本研究で明らかになった知見をもとに、高等教育段階における職業教育に関する研究発表を行なった。 まず、前年度までに明らかになった、職業実践専門課程の「企業・業界との連携」による教育の変化の傾向が、高等教育段階の職業教育に共通する変化であるのか、専門学校独自の傾向であるのか、という点について、国際比較も含めた検討を行なった。その結果、例えばドイツのIT業界においては、高度な人材需要への対応と、若年層からの人気によって、アカデミックな要素の強い職業教育が拡大しており「企業アカデミックタイプ」といわれる職業教育が拡大していることが明らかになった。中等教育段階での職業訓練の伝統のあるドイツにおいても、技術革新が進む領域においては、企業に依存した職業教育が拡大しており、日本における「職業実践的教育」とドイツにおける「企業アカデミック」タイプの職業教育との共通性が示唆された。 次に、これら高等教育段階の職業実践的教育が現代青年にとってどのような役割を果たしているのか、という点について、青年期教育の観点から検討を行なった。これらの作業は、本研究の今後の展開を検討するためのものであり必要となる調査も併せて実施した。 研究成果発表については、まず、大学評価学会全国大会において「大学生活から職業生活への移行ー教育福祉の観点からみた青年期職業教育機関としての大学」をテーマとして職業教育の高等教育化の実態と、大学教育に及ぼす影響について発表を行なった。また、学習開発研究所のセミナーに招致され「日本における非大学型高等教育における職業教育の現状と課題」をテーマに非大学型高等教育としての専門学校教育の特性について職業実践性を中心に、国際比較の観点も交えて研究発表を行なった。
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