研究課題/領域番号 |
20K13887
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
高田 麻美 岩手大学, 教育学部, 准教授 (30734545)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 教育博物館 |
研究実績の概要 |
当初の計画において実施できなかった海外における資料調査を実施し、その資料の分析を行なったうえで、研究成果を取りまとめることが2023年度の目標だった。しかしながら、新型コロナウイルス感染拡大とその影響が残ったことをうけ、2023年度も海外での資料調査を取りやめ、国内の資料調査にとどめた。そのため、研究期間を2024年度まで延長することとした。 2023年度は、主に以下の二つについて取り組んだ。 第一に、これまでに収集した資料とその分析に基づき、『近代日本の教育博物館―モデル館と地域の関係史―』を東信堂より出版した。概要は次の通りである。北米における「狭義の教育博物館」と「広義の教育博物館」の知見を得た文部省は、教師教育に資する後者のモデルを選択し、文部省教育博物館を設置した。また、同館をモデルとしながら、府県立教育博物館も設置された。ただし、各地の教育博物館はモデル館の単なる模倣に終わらなかった。地域の小学校や教員のニーズに応えるため、教具の貸出や現職教員対象の公開講座などの教育活動を柔軟に展開した。それゆえ、各地の教育博物館がその在り方を模索しながら、戦前期における現職教員の資質向上に貢献したことを明らかにした。 第二に、東京都公文書館所蔵の東京府庁文書を調査し、文部省教育博物館における教具の普及活動を検討した。その成果を全国地方教育史学会第46回大会において発表した。具体的には、小学校補助金の廃止をうけて府県が「検束督責」に偏ることを危惧した文部省が、優良な教師・生徒・学校等を選抜し、褒賞を付与するために「達第15号」を定めるに至ったこと、褒章品は文部省教育博物館に準備させたことが明らかになった。また、私立小学校の質的向上をねらう東京府は、「達第15号」を利用し、公立小学校を〈実際の範型化〉として定め、私立小学校に対して〈範型への他者の同調〉を促そうと意図したのではないかと指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大とその影響が残ったことに伴い、当初計画した海外の調査が実施できなかった。それゆえ、本年度は研究の基礎資料を十分に収集することができなかったということが一番大きな理由である。本年度に関しては、国内での資料調査を再開し、収集した資料に基づいて全国地方教育史学会で研究発表を行ない、単著を出版した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの状況によるが、2020年度~2023年度に予定した資料調査(主に国内調査)を2024年度に実施したいと考えている。また、海外での資料調査が再開できないと判断された場合、デジタルアーカイブや資料複写サービス等が利用可能かどうか、あるいは、別資料で代替できないかどうかを検討する。収集した資料の分析を行ない、成果を論文等として公表するとともに、年度末には冊子体の最終報告書を作成したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初海外の資料調査を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大とその影響が残ったことにより、計画通りに調査ができなかったことが大きな理由である。資料調査の遅延に伴い、最終報告書の作成を見送った。2024年度は資料調査・収集を積極的に行なうとともに、年度末に最終報告書を作成したいと考えている。
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