研究実績の概要 |
本年度は先行研究と一次史料の調査を行い、以下の文献を収集した。 1.倉敷市立中央図書館の「彰邦文庫」に所蔵されていた『倉敷小学学習環境要覧』を収集した。 2.倉敷市総務課歴史資料整備室に所蔵されていた『低能児並劣等児教育の実際』を収集した。 3.倉敷小学校と研究交流のあった福井県三国尋常高等小学校の所蔵史料を収集した。
本年度は、公立小学校教員の「実践思想」を解明するために、岡山県倉敷尋常高等小学校(以下、倉敷小と省略)の校長である斎藤諸平を対象とした。当初、斎藤は能力別学級編制や知能測定法に懐疑的な立場であったが、アメリカの教育状況を視察するなかで、科学的根拠に基づく教育の必要性を認める。視察で得られた知見をもとに、倉敷小では能力別学級編制、限定的自由進度、ドルトン式自律学習など、児童の能力に応じた授業方法、学級編制が積極的に推進された。特にヴァン・エブリー・キルパトリック(Kilpatrick, Van Evrie,1866-1946)の「分科教授」を参考とした科任単位制学級担任法(以降、担任法と略記)が導入され、教科担任制に基づく学級編制が実施された。担任法はドルトン・プランの学習形態と極めて類似しており、同プランよりも先行して実施されていることから、ドルトン式自律学習を構築する際の土台になったと推察される。他にも、学校図書館や学級文庫などの教育施設が教師の実践思想の形成に果たした役割は大きかった。そこで「学習空間」としての学校図書館がどのように利用されたのか検討を行った。
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