研究課題/領域番号 |
20K13889
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
亀口 まか 龍谷大学, 文学部, 准教授 (10554082)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 学齢児童 / 放課後 / 女性労働 / 社会事業 / 勤労動員 |
研究実績の概要 |
今年度は、本研究の視点である女性労働の歴史的検討に関する先行研究の整理・検討を行い、本研究の課題の精緻化を進めた。また、戦時期の学齢期保育事業の実施状況について、地域資料を中心に資料調査を行った。 まず先行研究については、女性労働、児童保護、勤労動員、家族政策、職業と家庭の両立、戦時動員、戦時社会政策・社会事業、戦時厚生事業、戦時保育・教育に関する文献を収集した。戦時期の母性と労働に関する研究、戦時期の家族政策に関するこれまでの研究は、既婚女性労働者が母性と勤労という二つの国家的役割に規定されていたことを明らかにしてきている。一方、近年の福祉国家に関する歴史研究では、職業と家庭の両立は、性別役割分業を前提とする家庭規範を継承する理念として戦後に形成されてきたと指摘してきている。これらの知見をふまえ、本研究は、既婚女性の勤労動員強化を背景に、親が不在の家族生活が支援対象となっていった経緯を実証的に明らかにすることによって、職業と家庭の両立という論点の戦時と戦後の関係性の通史的検討が課題であることが明確になった。 次に地域資料の調査については、1940年代以降、児童保護、女性団体、軍事援護事業、戦時厚生事業の関係者や機関が執筆・発行した書籍・雑誌等においてこれまで収集してきた資料の整理と読み込みを行った。その結果、最も多くの資料が見つかった愛知県について、学校所蔵資料、公文書館、図書館、資料館を中心とした地域資料の調査を開始し、一部収集した。調査地域は、アジア・太平洋戦争期に航空機産業の拠点であった名古屋市、半田市を中心に、既婚女性の勤労動員、社会事業、学校教育に関連する地域資料の収集、整理を行ってきている。そのほか、新聞地方紙、地域女性史資料の調査を随時行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、各地域における学齢期保育事業の実施状況について、新型コロナウィルス感染症の影響により現地での地域資料の収集を計画通り実施できなかったため、やや遅れている。ただし、これまで入手している資料の整理を行い、現時点で最も多くの資料がある愛知県に焦点をあてて地域資料調査を開始してきている。次年度は、本県以外の調査を計画的に実施し、研究の進展に努める。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は戦時期の事業の実態の解明と地域的、歴史的特質の検討を進める。 ①地域資料の収集:各地域の事業について、愛知県のほかに予定している地域資料調査を行う予定である。また、文部省、国民学校等の教育行政に関する文献を調査する。 ②収集資料の分析の開始:収集した地域資料、文献資料を用いて、戦時期の学齢期保育地域的、歴史的特質の検討を進める。各地域における事業の目的、対象、方法、内容、この時期以前の事業との関連等を整理、検討し、実態の把握を行う。また、地域ごとの事業の共通点と相違点などの比較分析を行うことによって、事業的特質を考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の影響により、今年度予定していた現地での地域資料調査を実施できなかったため、次年度使用額が生じた。次年度も厳しい状況にあるが、調査地の選択、調査時期の調整準備を慎重に進める。
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