最終年度の課題は、主に①〈目的としての対話〉を実現するための原則(=対話原則)に関する仮説の検証結果の分析と、それに基づく②新たな臨床教育学の方法の提示、の2つであった。 昨年度までの研究成果に基づいて、引き続き、SSWしが(ソーシャルワーク研究会滋賀)の定例会合の場(4月、12月、2月の合計3回)を借りて、対話実践を広げて行くための方策等を中心に、総括的なふり返りを行うとともに、関係の対等性という観点から、関連する思想や実践との関連についても意見交換を行った。最終的に、個別の実践者を対象とする一対一での個別インタビューよりも、複数の実践者と共に語り合う場での聴き取りや意見交換のほうが本研究課題に適していると判断し、その点では一部研究方法を修正した。 上記を通じて、本研究における「臨床教育学における解釈学的アプローチとその説明枠組みの限界をいかにして突破するか」という問いに対しては、理論・実践の両面にわたり、関係性に焦点を当てることの重要性、換言すれば、特殊性と普遍性、個(部分)と全体、当事者と専門家との関係等、臨床教育学の理論と実践をめぐって展開される多様な関係性を、垂直・水平の両方向においてポリフォニックに捉えることの重要性が明確になった。 なお、この関係性をめぐる議論は「普遍性」が成立しづらくなっていると指摘されることもある現代において、対話主義が持つ思想的・原理的意義という観点からも論じられるべきだが、この点に関しては今後の課題としたい。 上記の成果は、関連学会での個人研究発表(2件)として公表した。また、それらを元にまとめた研究論文は、著作(共著)としても公表される予定である(2024年6月公刊予定)。 最終年度ではあるが、以上の過程で行った追加の文献調査において、臨床教育学、オープンダイアローグ、修復的対話等に関連するものを中心に、引き続き文献等を多数購入した。
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