研究課題/領域番号 |
20K13896
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
荻巣 崇世 上智大学, 総合グローバル学部, 助教 (00743775)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 教員養成 / カンボジア / 質問紙 |
研究実績の概要 |
本研究は、世界標準の教員養成の実現と「学び続ける教師」の育成を目指して、2018年より従来の2年制の師範学校から4年制の大学学部レベルへと教員養成を高度化する改革を行なっているカンボジアにおいて、新旧の養成機関に在籍する学生を追跡することにより、学生の視点から高度化の実態を解明するとともに、 「学び続ける教師」の育成に対する高度化のインパクトを実証的に明らかにすることを目的としている。2022年度は、質問紙調査の実施とインタビューによる追跡調査を中心としたデータ収集を実施することを予定していたものの、新型コロナウイルス感染症の影響で、年度半ばまで現地渡航ができなかったことから、予定を半年ずらして、質問紙調査のみを実施した。9月にはおよそ3年ぶりに現地渡航が実現し、教員養成大学の学長・副学長及び実務レベルでの研究協力者と直接面会し、調査内容や進め方について議論することができた(別予算での出張に合わせて実施)。その後、オンラインベースで質問紙の作成を進め、翻訳・修正を経て、2023年3月から4月にかけて、質問紙の回収を進めているところである。現時点で回答数は想定を上回っており、順調に集まっていると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響で、現地渡航ができなかったことから、現地協力者との顔合わせができず、質問紙の作成・実施及びインタビュー調査を行えなかった。また、当初は、2022年1月末までに質問紙を回収し、その結果をもとに2月から3月にかけてインタビュー調査を実施する予定であったが、質問紙の翻訳が想像以上に難しく、カンボジア語での微妙なニュアンスまでこだわって翻訳した結果、質問紙調査の開始が3月はじめまでずれ込んだ。一方、質問紙は今後毎年繰り返して使用していくものであることから、時間をかけて熟慮して作成したことに意義はあったものと考えられる。また、現地の学事歴に鑑みて、2023年度12月までにフォローアップ・インタビューを実施できれば研究の仕組み自体は維持できるので、影響は最小限であったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、①第一ラウンドに当たる質問紙の分析およびフォローアップインタビューの実施、②第二ラウンドに当たる質問紙調査の実施、を行う予定である。 ①について、具体的には、4月中旬に第一回の質問紙調査の回収を終えるので、回答の入力および分析を、現地協力者の協力を得て5月末までに実施し、教員養成大学の学生がどのような教師像・教職観を持ち、教職課程を通してどのような変容を経験しているのかについて、ベースラインを明らかにしたい。この結果は、6月中旬に予定している現地渡航時に、現地協力者及び政府関係者との打ち合わせにおいて発表し、現地の事情に即したフィードバックを得る予定である。また、9月末に実施される日本教師教育学会にて、上記の成果について口頭発表を行い、アカデミックな立場からもフィードバックを得る。続いて、質問紙調査をもとにしたフォローアップ・インタビューについて、9月上旬にバッタンバンでの現地調査を実施し、回答者の中から既に教壇に立っている対象者(このうち、質問紙で参加の意思を表明した者)を訪問して聞き取り調査を行う。この際、バッタンバン教員養成大学の教員の協力を得て実施し、回答内容の分析においても、オンラインで協議しながら、日本とカンボジアの双方の視点からの分析を試みる。第一ラウンドの結果を統合し、現地協力者と共同で、11月に広島にて開催されるアジア比較教育学会(CESA)にて、発表することを予定している。 ②については、教員養成大学の卒業式が行われる12月までに、第二ラウンドとなる質問紙調査を全在校生を対象に実施する。実施に当たっては、第一ラウンドで得た知見をもとに、必要があれば質問項目の改訂や再構成、翻訳の修正をする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は、本事業に係るカンボジア渡航は現地協力者との打ち合わせのみで、実質的な調査実施の段階ではなかったことから、本事業からはカンボジア渡航の旅費は支出しなかったこと、また、学会がオンライン開催になったことと、参加を予定していた北米比較教育学会(CIES)への参加を家族の事情により取りやめたことで、旅費に次年度使用額が生じたものである。 また、質問紙の作成と実施にあたり、英語からクメール語への翻訳を業者に依頼したが、想定よりも低い価格で翻訳ができたこと、また、当初予定していた紙ベースでの調査をオンラインでの調査に切り替えたことから、人件費・謝金及びその他の支出を抑えることができた。 一方、2023年度には、2022年度に予定していたフォローアップ・インタビューの実施を控えていることから、複数回の現地渡航が必須であり、かつ現地協力者への謝金の支払いが生じる。さらに、2023年度は国内学会・国際学会ともに対面での開催となることから、外国および国内旅費が複数回生じる見込みである。
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