本研究は、家族の育児・子育て行動(以下では、子育て行動とする) の階層差がどのように変化してきたかを、 育児や子どもへのサポートの分担、子どもと親の相互作用に着目して計量的に明らかにすることを目指す。以上の目的を達成するために、生活時間の政府統計である「社会生活基本調査」を用いた二次分析を行う。 3年目にあたる2022年度においては、これまでの研究成果の公表として2回の国内学会発表を行った。1つは日本教育社会学会において、子どもの学習時間について、分布の位置に着目した分析の必要性を主張し、学校段階による違いについて明らかにした。具体的には、学校段階が上がるほど分布がより広がる傾向を示した。ただし、この知見は、ゼロが多いという変数の分布を適切に捉える計量的な手法による再検討の余地がある。2つ目は数理社会学会において、夫婦が同じ時間帯にどのような行動をしているかに着目した分析を行った。これにより、家事・育児の分担の様相について時間帯という側面からアプローチした。分析結果は、女性に偏った家事・育児の分担が生じるメカニズムの一端が生活時間帯に着目することで明らかになる可能性を示しており、長時間労働が強いられる日本的雇用慣行とジェンダー不平等の関連が示唆された。 また、あらたに申請可能となった社会生活基本調査の匿名データ(2011年度・2016年度)を利用するための申請を行い、利用できるようにコードの整理を進めた。
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