研究課題/領域番号 |
20K13903
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研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
坂口 真康 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 講師 (00819427)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 共生社会 / 共生教育 / 南アフリカ共和国 / 高等学校 / Life Orientation / 歴史教育 / ナショナル・カリキュラム / ナショナルな試験 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、南アフリカ共和国(以下、南ア)を事例として、共生教育におけるナショナルな基準と多様な実践の折衷点を探索することである。2年目の2021年度は、先行研究、政府文書と南アの共生に関わる科目のナショナル・カリキュラム、試験、教科書等の分析・考察と南アでのフィールドワークの準備と実査を行うという計画を立てていた。2021年度の研究の主な成果としては、文献研究による共生に関わる教育の理論的検討、南アや他国の共生に関わる先行研究や政府文書の探索とともに、南アの学校で共生に関わる教育を担う科目(歴史科など)のナショナルなカリキュラムと試験(模範解答)や、そのような教育の中核を担うLife Orientationの教科書の探索が挙げられる(研究成果は、2021年度実施の学会の大会(3箇所)で発表し、学術論文(3本)として公表した)。そこでは、例えば、共生教育に関わる理論的研究を通じては、「多様性」と「統一性」の折衷点に関する議論が、学校(教員)の役割に関する議論に限らず教育の本質的問いとして議論されてきたことなどを指摘した。また、例えば歴史科のカリキュラムや試験の探索を通じては、南アの歴史教育が社会構築主義的観点から営まれていることや、同教育では「権威性(統一性)」に疑問を投げかけつつ「多様性」を促進する際に、「過去」を「歴史」として解釈するための資源として文書のみならず口述記録も重視されていることなどを指摘した。 2021年度の研究成果は、日本(語)の文脈での共生教育の理論的議論の検討とともに、同議論と関連づけながら十分に議論されてこなかった南アの共生教育の具体的内容(教授・学習と評価の内容)を分析・考察した点に意義と重要性があるといえる。なお初年度に続き、新型コロナウイルス感染症の影響により十分に進められなかった南アでのフィールドワークの準備と実査は、今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2年目にあたる今年度は、共生教育の理論的検討や、南アフリカ共和国の共生教育の具体的な教授・学習内容(ナショナル・カリキュラムと教科書)および評価内容(ナショナルな試験)の分析・考察は計画通り実施し、研究成果を学会発表と学術論文という形で公表することができた。一方で、昨年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症の影響により南アフリカ共和国でのフィールドワーク実施可否の見通しが立たなかったため、実際の準備を含めた具体的な調査活動を進めることが困難であった。以上が、「やや遅れている」と評価した理由である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては、2年目の研究成果を学会の年次大会で発表した上で、そこでの意見等を踏まえて修正した学術論文を学会の機関誌等に投稿する。加えて、世界的な情勢を見極めつつ、南アフリカ共和国(以下、南ア)でのフィールドワークの準備と実査に取り組むことが課題となる。後者に関しては、1年目と2年目の研究成果をもとにした調査項目の設定、研究倫理審査申請と南ア西ケープ州教育省への調査許可申請を経た上で実施する計画を立てている。ただし、1年目と2年目に引き続き、新型コロナウイルス感染症の影響により南アでのフィールドワーク実施が困難な状況が続き得るため、文献研究、政策分析、カリキュラム/教科書/試験の分析を実施することを対応策として設ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に続き、新型コロナウイルス感染症の影響により、南アフリカ共和国(以下、南ア)でのフィールドワークに関わる予算を次年度に使用する理由が生じた。次年度の感染状況等も踏まえる必要はあるが、実査が可能であることを想定し、南アでのフィールドワークに関わる予算として使用することを計画する。加えて、初年度に引き続き、南アでのフィールドワークが困難な場合は、文献研究、政策分析、カリキュラム/教科書/試験の分析等に関わる予算として使用することも計画する。
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