研究課題/領域番号 |
20K13917
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研究機関 | 京都先端科学大学 |
研究代表者 |
田村 徳子 京都先端科学大学, バイオ環境学部, 准教授 (10738850)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 学校 / ブラジル / 子どもの権利 / 子どもの参加 / 選挙 / 校長 / 教育学 / 校長採用制度 |
研究実績の概要 |
3か年の研究計画に延長1年を加えた第4年目あたる令和5年度には、①ブラジルにおける子どもの参加に関する文献資料の収集・分析、②ブラジルにおける子どもの参加に関する現地調査、③校長直接選挙に関する現地調査という3つの作業をおこなった。今年度の重点は現地調査とし、新型コロナウイルス感性症拡大の影響によって、これまで実施できなかった実態の把握をすべく、その準備作業を進めた。 ①に関しては、公共政策への子どもの参加の事例として、サンパウロ州ジュンディアイ市の子どものまちプログラムに着目し、文献資料を収集し、分析をおこなった。②については、①での作業をもとに、同市を訪問し(2023年8月)、市長や市教育局長、市文化局長などへの聞き取りや、子どもの要望から作られた市営公園「子どもの世界」など、子どものまちづくりの成果を視察した。③については、ブラジルパラナ州クリチバ市を2回訪問し(2023年8月と2024年2月)、2014年と2017年に調査した学校の校長直接選挙に関する追跡調査をおこなうとともに、最新状況の把握に努めた。加えて、校長直接選挙を実施せずに校長を任用する全日制の学校と市民軍学校の設置が推進されていることを把握したため、それらの学校にも訪問し、情報を収集した。 本年度の成果としては、広島国際会議場で11月に開催されたCESA 2023(13th Biennial Conference of the Comparative Education Society of Asia)で校長直接選挙と子どものまちプログラムにおける子どもの参加実態を報告したものと、市民軍学校の教育的特徴を分析した「ブラジルの市民軍学校における生徒指導と道徳教育」(『地域連携教育研究』第9号、pp.91~97)がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間の延長が認められたことによって、今年度はこれまで実施できなかった現地調査をおこなうことができた。これによって、コロナ禍期間を含めた校長直接選挙に関する最新の現地情報を収集することができたことが、本年度の大きな成果といえる。 とはいえ、本研究課題の中心であった校長直接選挙における子どもの投票行動のデータ収集ができないままではあることは課題として残っている。他方で、全日制の学校や市民軍学校と呼ばれる新しいタイプの公立学校の情報を収集できたこと、また、ジュンディアイ市における子どものまちづくりへの参加事例を調査できたことは、ブラジルの子どもの権利をテーマとする本研究にとって有益な成果である。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度の調査計画がおおむね予定どおりに展開でき、また本研究期間のさらなる1年の延長が認められたことから、最終年度となる令和6年度においては、令和5年度の現地調査で収集したデータの分析を進めるとともに、追加で情報・データが必要となった場合は、zoomやメールを活用して調査協力者からその情報を得るようにする。 最終年度においては、これまでの文献調査と現地調査で得られた知見を総合的に考え合わせ本研究全体の総括をおこなうこととしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度は8月にブラジルを訪問し、必要なデータ資料を入手したうえで、それをもとに国際ジャーナルへ論文を投稿することを予定していた。しかしながら、4月にブラジル国内で起きた保育園での襲撃・殺害事件の影響を受け、クリチバ市立の小学校への訪問が許可されず、予定していたデータ資料の収集ができなかった。そのため、国際ジャーナルへの論文投稿が先送りとなり、英文校閲等への支出が不要となった。このことが費用の繰り越しが生じた主な理由である。 しかしながら、2月のブラジル訪問では8月にかなわなかった学校訪問をすべて実施することができ、必要なデータ資料を収集できた。したがって、令和6年においては、専ら成果公表に重きをおき、国際ジャーナルへの論文投稿とそのための英文校閲、また国内外の学会参加のための旅費として研究費を使用する予定である。
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