本研究では,医療者に依存せず,親・保育者が3歳未満児に対して行う予防接種関連疼痛低減ケアモデルの構築を目的としていた。現在効果が検証されている疼痛知覚低減方法は,医療者の意識の高さに依存している。不安知覚低減方法は、3歳未満児を対象とした方法は検討されていない。しかし3歳未満児に対しても、しつけの原理であるスクリプト形成や馴化新奇反応を活用し,予防接種に関するスクリプトを形成できれば,予期不安を低減できると考えた。2020年度は,基礎的データを収集することを目的として,予防接種における子どもと保護者の実態を調査した.対象は乳幼児現在乳幼児を育てている保護者であり,無記名自記式質問紙調査を実施した.調査内容は,子どもが予防接種の際にどの程度,どのように嫌がる様子を見せるのか,子どもが予防接種を嫌がる年齢,子どもを予防接種に連れて行く際の保護者の行動や思いについてなどであった.調査結果の概要としては,以下のことが明らかとなった.予防接種を強く嫌がる子どもは4割弱おり,子どもを予防接種につれて行くことを苦痛に思っていた保護者は5割程度いたが,その約半数は誰かに助けを求めたことがなかった.予防接種に関する説明を子どもにしていた保護者は6割いたが,どのように説明すべきか知りたいという保護者も4割弱いた.以上のことから,予防接種を受ける子どもの不安知覚を低減させる方法の開発及び保護者への介入の必要性が示唆された.2021年度はさらに対象数を増やして質問紙調査を実施したり、各月齢の認知発達に応じた予防接種関連疼痛低減ケアのツール開発を行ったりする予定であったが、COVID-19の影響により,保育所等への立ち入りを差し控える必要性などもあり実施できていない。2022年度も同様であり、研究に関連した活動は実施できなかった。
|