研究課題/領域番号 |
20K13937
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研究機関 | 多摩美術大学 |
研究代表者 |
後藤 正矢 多摩美術大学, 美術学部, 講師 (60786979)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 幼稚園教員養成 / 教員養成学部教官研究集会 / 大学における教員養成 / 幼稚園教育 / 幼稚園教育要領 / 教師教育 / 教員養成史 / 戦後教育改革 |
研究実績の概要 |
本研究の主題は,大学における教員養成が始まった戦後期における幼稚園教員養成の実態を明らかにすることである。本年度は当時の国立大学において幼稚園教員養成にあたっていた国立大学教官・附属園教諭が参加した,1954(昭和29)年11月の教員養成学部教官研究集会幼稚園部会(幼稚園部会は第1回,以下「研究集会」)に特に焦点をあて検討し,成果を論文として発表した。 研究集会では,第1分科会「教員養成に関して」と第2分科会「保育内容に関して」が形成され,それぞれの議論が行われた。 第1分科会では,各県の幼稚園教育や教員養成の現状報告の後,主に教職に関する科目の履修単位数内訳を協議している。幼稚園教員養成については,戦後の厳しい現実を踏まえつつも,どちらかといえば理想の養成課程について意見交換がなされている。第2回以降の研究集会では「幼稚園教員養成の諸問題」が討議研究されており,より現実的に養成課程を準備する視点で議論が行われている。このことについては,今年度論文としてまとめる予定であるが,その際,第1回の第1分科会との連続性の検討が必要である。 第2分科会では「幼稚園教育要領」についての議論が行われた。本研究の成果により,研究集会における議論が「教育要領」にかなり反映されていることが明らかになった。これは,現在まで続く「教育要領」の成立過程についての重要な発見である。ただしこのことは,地域的に偏りのある一部の国立大学の研究者のみが大きな影響力をもっていたことも意味しており,地域の実情や私立の実態,幼稚園教育や子どもの実際が「教育要領」に生かされたかについては疑問であることも明らかになった。この研究成果については本年度,日本保育学会の学会誌に掲載され,多くの保育学研究者に成果を公開することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は①全国の大学等において関係資料を発掘,収集すること。②形成的な学会発表を行い,研究者コミュニティからの助言を得ることを予定していた。 ①については,戦後教育改革資料を収蔵している公立図書館において資料収集を行うことができたが,COVID-19の影響もあり大学等における収集はあまり進まなかった。感染状況が落ち着き次第,全国の大学等においても発掘,収集を行いたい。②については上記の通り,日本保育学会の学会誌上において,ここまでの成果を発表することができたため,概ね順調であると考えている。形成的な学会発表については本年度も継続したい。 ①②を総合して,特に①は本研究において重要であることから,「3: やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後の主な研究課題は,引き続き第2回以降も含めた研究集会における議論の検討を軸としながら各大学の養成課程の具体を明らかにすることである。上記の通り,戦後期の幼稚園教育改革において当時研究集会に集まった国立大学の教官の影響力は強かったことから,教員養成についてもこの研究集会に焦点をあてることが意義深いことであると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響で全国的な文献調査ができなかったため残金が生じた。本報告書作成時点では,感染状況に落ち着きがみられてきているため,今年度,調査先の許可がおり次第, 史料発掘,収集の費用として使用したいと考えている。
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