研究課題/領域番号 |
20K13946
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
須藤 茉衣子 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 政策科学研究部, (非)研究員 (40817243)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 保育の質 / 安全管理 / 保育環境 / 保育政策 / 子育て支援 |
研究実績の概要 |
【研究の目的】保育環境に関して、国によっては、一律のガイドラインを提示し、保育の一定の質を担保する仕組みを構築している国もあるが、日本では、地域や自治体、認可・認可外等の施設の種類、運営主体等によって、設備や運営に関する基準は異なっている。さらに、児童福祉法に基づいて定められた日本の認可保育所の設備の基準(最低基準)は、他の先進諸国と比較して低いことも指摘されている。基準の抜本的な見直しが行われない背景には、関連する研究が少なく、十分な根拠が示されてこなかったことも一因であると言える。本研究では、保育中の事故に注目し、保育者の人員配置をはじめとする設備や運営に関する要因との関連を検討することで、基準の見直しの必要性を示したい。 【実施内容】既存の事故事例データベースの分析では、事故発生時の状況が把握しづらい、得られる情報が限られている、といった理由から、事故の発生と、設備や運営に関する要因(最低基準)との関連を検討するには限界があると考えたため、本研究では当初、保育施設に協力を依頼し、保育事故に関して前向きにデータ収集を行うことを検討した。その後、調査設計に関して、保育園長へのヒアリングを行う中で、自治体が保管する事故報告書に関する情報を得ることができた。各保育所から自治体に提出される事故報告書には、事故発生時の状況や事故の原因・問題点(危険予測及び危険回避の余地があったかどうか、事故発生時の状況・場所・人の配置に問題はなかったか、保育者の監督状況に問題はなかったか、施設管理に問題はなかったか等)に関する詳細な情報が記載されていることから、本研究ではこれらの事故報告書を対象に研究を実施したいと考え、データの収集・分析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、都内一自治体の保育課に本研究への協力を依頼し、自治体が保管する事故報告書データの提供を受けた。対象自治体では、保育所で発生した医療機関での受診を有するけがに関して、事故報告書の提出を依頼している。事故報告書には、事故の発生状況や受診状況、原因・問題点、その後の改善策等の情報が記載されている。今回収集及び分析対象とする事故報告書は、自治体が運営・管理主体である公立保育所から提出されたもののみであった。2019年度と2020年度を対象とし、約1,700件の事故報告書データを収集した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、PDFファイルで収集した事故報告書のデータ入力を引き続き行い、分析用データセットの作成を進める。記載内容から、事故事例を分類・パターン化し、保育所における事故の原因や対策の傾向を把握することで、とくに保育所の設備や運営に関する基準の観点から、事故予防に関する課題や対応策を提示することを目指す。あわせて、昨年度実施した文献検索(保育事故の要因や対策に関する国内外の文献を収集するため、MEDLINE、EMBASE、CINAHL、ERIC、医中誌の学術文献データベースを用いて検索を実施)の結果をまとめ、保育施設における事故の原因・対策に関する既存の課題やエビデンスのマッピングを進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度収集した事故報告書データのうち、年度内に一部しかデータ入力を終えることができなかった。翌年度分として請求した助成金は、事故報告書データの入力作業及びデータセット作成に必要な経費として使用する予定である。
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