研究課題/領域番号 |
20K13947
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
宮本 友子 早稲田大学, 人間科学学術院, その他(招聘研究員) (70774165)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 痩せ / BMI / 体重 / 妊娠 / 低出生体重児 / 健康 / ライフコース / DOHaD |
研究実績の概要 |
本研究では、我が国の女性における社会課題の一つである「若年女性の痩せ」について、地域格差を切り口として、社会的決定要因と次世代の健康格差への影響を明らかにすべく分野横断的な検討をすすめている。国内の地域格差に対処する前に、国家間の地域格差に目を向けた検討からはじめている。前年度までの文献研究により、諸外国との比較では、日本人女性における妊娠前の痩せに加え、妊娠中の少ない体重増加量が、次世代の健康格差(児の出生体重)の重要な決定要因である可能性が明らかとなってきた。そこで2021年度は、ニュージーランド・オークランド大学リギンス研究所と共同で、各国の妊娠中の体重増加量を左右する診療ガイドラインに関する研究を行った。 日本をとりまくアジア・太平洋地域を対象に、妊娠中の体重増加ガイドラインの収集をすすめ、最終的に10の診療ガイドラインを特定した。AGREEⅡ(Appraisal of Guidelines, Research and EvaluationⅡ)を用いて診療ガイドラインの質を評価したところ、90%のガイドラインは、品質が「低い」と判定された。また、各ガイドラインで推奨されている妊娠中の体重増加量の推奨値とその根拠となるエビデンスを抽出・比較したところ、多くは2009年の米国Institute of Medicineの推奨値に従っていたが、日本やベトナムのように独自の推奨値を持つ国もあることがわかった。この結果から、日本における診療ガイドラインの特異性が、諸外国に比べて妊娠中の少ない体重増加量の背景要因の一つである可能性が示唆された。本研究のシステマティックレビュー・プロトコルは、PROSPEROにて公開されており、研究成果はNutrients誌の特集号“Nutrition Education in the Perinatal Period”に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始2年目にあたる当該年度は、ニュージーランド・オークランド大学リギンス研究所との共同研究として本研究課題を進める機会が得られ、現地の研究者とともに国家間の地域格差に関する研究を行い、その成果を論文として出版することができた。この点では、当初の計画以上に進展していると評価することができるが、一方でCOVID-19に関連するやむを得ない事情で当初の計画が後手に回っている。したがって、全体的な評価については、「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度以降は、国内の地域格差(都道府県格差)に目を向けた地域相関研究に着手する。日本国内で政府統計データにアクセスして、人口動態統計より出生体重に関するデータを、また文部科学省の体力・運動能力調査より児童の体格・体力に関するデータを、さらに国民健康・栄養調査より若年女性の体格データを収集する。それらを、都道府県別に集計して縦断的に連結・分析することで、若年女性の体格における地域格差が、次世代の健康格差(出生体重、児童期の体格・体力)に及ぼす影響を検討する。また、2023年度以降に取り組む、若年女性の痩せの地域格差を生み出す社会的決定要因に関する検討を見据え、その解析に用いる指標を選定するためのプロトコルの開発を2022年度より開始する。 上記とは別に、当初の計画では予定していなかった質的データを用いた調査研究も実施する。具体的には、ニュージーランド在住の日本人産後女性を対象に、個別インタビューを通して妊娠前後の体格や体重増加に関する経験や認識を探る。インタビューより得られた音声データを文字に起こし、専用ソフトを用いて解析することにより、日本からの移民女性の適正な体格・妊娠中の体重増加につながる健康行動の促進要因・阻害要因について洞察を得る。これらの結果は、将来的に、共同研究者が行う日本国内の産後女性を対象としたインタビューの結果と比較する予定である。それによって、地域格差についての検討が可能となる。 このように、質的・量的の両側面から、妊娠前後の期間を通して次世代の子どもの健康格差がどのように生まれるのかを明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末(3月中旬)に論文が受理されたため、論文掲載費が当該年度の会計処理に間に合わなかった。したがって、掲載費約30万円は次年度使用額として執行する予定である。 その他、システマティックレビューにおいて必要となる翻訳費用が、当初見積もりよりも低コストで済んだことから、残額が生じた。次年度に繰越し、データ収集や分析に必要なPCおよびその周辺機器等の物品の購入に充てる予定である。
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