研究課題/領域番号 |
20K13948
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
稲井 智義 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (30755244)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 子ども福祉施設 / 教育思想 / 社会史 / 新教育 / 幼児教育 / ユートピア / 石井十次 / 孤児院 |
研究実績の概要 |
今年度は、第一にこれまでの国内外の子ども福祉施設と教育思想の社会史研究の動向を総括した。孤児院から新教育とユートピアへ至る流れについて、幼児教育史研究に関わる共著でコラムにまとめた。その成果も踏まえながら、近代日本の子ども福祉施設と教育思想に関わる研究動向を検討した。いずれの研究も、英語圏の日本研究に言及した点で意義がある。さらに『子ども観と教育の歴史図像学』の合評会で報告した。本報告を通じて、欧米における子ども観と教育の社会史研究の最先端の知見を学ぶことができたと同時に、日本語圏における欧米の子ども観の社会史研究を検討しながら日本の歴史との関連についても言及した。この間に、英語圏での日本と欧米における子どもと家族の歴史研究についての著書と論文も収集し読解した。これらの成果についても来年度以降に論文にまとめる。 第二に、子どもに遊びを提供して主体性を育もうとする新教育思想について、戦後教育史との関連から検討した。幼児教育における探究について検討した論考では、探究(探求)への関心が戦後の『保育要領』でも見られ、1956年と1964年の幼稚園教育要領で衰退して、1989年以降の幼稚園教育要領で高まっていることを明らかにした。その際に、レッジョ・エミリアの幼児教育やリゾームという視点にも言及しながら、現在の幼児の探究活動事例が持つ意味についても考察した。もう一つの論文では、岡山孤児院を設立した石井十次が戦後の道徳・社会科教育の資料と教科書で紹介され続けていたことを検討した。その際に、戦後の新教育関連資料でも岡山孤児院が紹介されていることを指摘した。 以上の成果を通じて、子ども福祉施設と新教育思想の関係については一定の見通しを得た。次年度以降は、幼児教育実践の分析を進めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究動向の把握や現代的な課題との関連については見通しを得た。一次資料の分析を進めていくことが次年度以降の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
現地調査は実施できていない。そのため、文献複写・文献貸借によって、関連する資料の入手に努めている。入手可能な資料を中心にして今後も研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
適切に物品を購入し続けた結果、残金が生じた。この二年間、旅費申請をしていない。次年度も、適切に物品を購入し続ける予定である。
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