昨年度末に実施した公開シンポジウムの録画などを活用し、こども園や小学校等の保育者・教育者と議論を行った。さらに、幼児教育で広く活用され始めているドキュメンテーションや、カナダ・ブリティッシュコロンビア州で実践されている幼小接続期カリキュラムなどを参考に、生態想像力を通したESDのカリキュラム地図の描き方を可視化した。また、環境との出会いを通したESDを支援するツールとして、「エコロジカル・イマジネーション・カード」を作成した。生態想像力を通した学びは、環境との偶然の出会いを含んだ複線的な経路のカリキュラムとして描くことができ、子どものみならず教師の生態想像力を動力としつつ、記録と計画が一体となって進んでいくものであることが明らかになった。 研究期間全体を通して、生態想像力理論の精緻化と、実践ツールへの具体化を並行して行うことができた。理論面では、幼児が身近な事物を〈生きている〉と感じる想像力が、生物・非生物を含めた多様な事物へのケアや、その事物をめぐる生の関係性の思考につながっていることを示し、幼児教育と生活科を接続するESDの新たな視点を提示した。また、実践を支援するカリキュラム地図をはじめとしたツールを開発したことで、子どもと共に〈生きているもの〉どうしの関係を想像し探究するというESD実践のモデルを示すことができた。研究成果は幼児教育学や学校教育学以外に、文学の分野でも注目されることとなり、予想を超えた反響も得られた。
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