研究課題
保育の質向上を考える上で園長のリーダーシップがどのように発揮されるかは重要な研究課題である。中でも私立幼稚園は、経営者である園長のリーダーシップが園の運営や経営を決定づけるといえよう。申請者はこれまで私立幼稚園の事業承継に着目し、その際に園長がどのようにリーダーシップを発揮しているのかを明らかにしてきた。だが、これまでの研究では保育経験の無い、1法人1園の私立幼稚園園長のみであったことが限界である。そこで、本研究では、これまでの研究成果を発展させ、園長になるまでのキャリアなどの社会的背景と、園がある地域などの文化的文脈とを軸に、事業継承のプロセスで発揮される私立幼稚園園長のリーダーシップについて明らかにする。そのために、異なる社会的背景、文化的文脈の園長約30名にインタビューを行い、SCATとTEAを用いた質的分析を通して検討する。本年度では、6名の私立幼稚園・保育園園長へのインタビューを行った。その結果、大規模法人において、その事業継承のタイプによって、発揮されるリーダーシップが大きく2つに異なることが明らかになった。第一は、法人全体を統括する立場から、経営面に軸を置き、保育の運営や質に対して学ぼうとしていく理事長・園長である。第二は、事業継承する背景は、異なっているが、保育の質に軸を置き、運営や経営を捉えているタイプであった。両者のタイプ共々、安定的な私立幼稚園(保育園)の経営という目的は同じであるものの、そのリーダーシップのタイプによる運営枠組みの違いが明確になり、それが各園での組織運営にも影響を及ぼしていることが想定される。次年度においては、これらを踏まえて、追加インタビューを行うことが課題である。
2: おおむね順調に進展している
インタビュー調査は、コロナ禍において予定しにくいものであったが、おおむね調査を行うことが出来ているといえよう。
分析を行うに従い、追加のインタビューの必要性が明らかになりつつある。今後は、私立幼稚園のみならず、私立保育園の大規模園の園長に焦点をあて、さらに追加インタビューを行い、分析の妥当性を補強する。
新型コロナウイルスのため、国内でのインタビュー調査、学会発表、海外での学会発表など、予定通りに進まないことが多かったため。
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