保育の質向上を考える上で園長のリーダーシップがどのように発揮されるかは重要な研究課題である。中でも私立幼稚園は、経営者である園長のリーダーシップが園の運営や経営を決定づけるといえよう。これまでの研究から、血縁関係のある場合、幼い頃から園を引き継ぐ意識があること、継続して事業を継承したい意識が親子ともにあること、継承者のタイプによって、継承で大事にしたいことが異なっていることを明らかにした。 本研究の目的は、私立幼稚園の事業継承について、保育経験の有無、それまでのキャリアといった継承者の社会的背景と、法人種別、規模、地域性といった園の文化的文脈を踏まえながら、被継承者(先代)から継承者(次代)へと経営者が代替わりする事業継承プロセスをとらえながら、園長のリーダーシップがどのように発揮されているのかを明らかにすることである。 研究協力者は、6名の私立幼稚園園長、また補完として保育園園長へのインタビューを行った。その結果、大規模法人において、その事業継承のタイプによって、発揮されるリーダーシップが大きく2つに異なることが明らかになった。第一は、法人全体を統括する立場から、経営面に軸を置き、保育の運営や質に対して学ぼうとしていく理事長・園長であった。第二は、事業継承する背景は、異なっているが、保育の質に軸を置き、運営や経営を捉えているタイプであった。 両者のタイプ共々、安定的な私立幼稚園(保育園)の経営という目的は同じであるものの、そのリーダーシップのタイプによる運営枠組みの違いが明確になり、それが各園での組織運営にも影響を及ぼしていることが想定された。これらの知見は、大規模な私立幼稚園において、保育に関する学びの場だけではなく、マネジメントに関する学びの場が求められることが示唆された。
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