研究課題/領域番号 |
20K13958
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
谷川 夏実 明治学院大学, 心理学部, 助教 (10825409)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 子ども間の葛藤 / 教育言説 / 社会構築主義 / いざこざ / いじめ |
研究実績の概要 |
現在、小学校では低学年のいじめが増加していると言われているが、そのような小学生同士の葛藤をどのように理解し指導するかは教育上重要な課題である。この点で示唆に富むのは、小学校以上の学校段階で「いじめ」として捉えられる子ども間の葛藤が、就学前の幼児教育段階では「いざこざ」と捉えられることが多いことである。幼稚園では子ども間の葛藤はしばしば「いざこざ」として把握され、子どもの発達上の重要な機会と捉えられて指導の対象とされる。これに対して小学校では、子どもの間の葛藤は「いじめ」として把握される傾向が強く、問題行動の1つとして指導の対象に付される。本研究では教育問題の社会構築主義に基づいて、両学校段階における子ども間の葛藤に関する教育言説の構成の違いに着目し、その言説の構築過程に関する時系列的分析、ならびにその言説に枠づけられた各組織における子ども間の葛藤への指導のあり方を比較分析することを目的としている。 3年計画の第1年次である令和2年度は、子ども間の葛藤に関する教育言説の構築のされ方が幼稚園と小学校でどのように異なっているのかについて、各学校段階の行政関係書類、教育関係雑誌や、研究論文などに基づき検討し、分析の視点や論点を整理した。とりわけ注目すべき点は、幼児に関する「いざこざ」の研究が登場するのは1982年であり、これは小学校以上の段階で「いじめ」言説が浸透するのとほぼ同時期である。教育問題に関する種々の分析では、1970年代半ばが問題の1つの転機とされることが多いが、実は幼児の「いざこざ」言説の登場もその時期に重なることが予想される。このことを1つの手がかりとして、1970年代半ばまでとそれ以降において、子ども間の葛藤に関する教育言説が学校段階の違いに応じてどのように編成されてきたのかについて探究を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概ね計画に沿って研究を実施できたが時間的制約等から研究成果の発表ができなかった。所属学会での発表等を通して議論をすることで、論点や視点がより明確になったものと思われる。研究期間全体の進捗に鑑みると問題は生じていないものの、この点をふまえ「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、子ども間の葛藤を表す言説の構築過程を時系列的に明らかにする。「いじめ」言説の構築過程は先行研究に多くの蓄積があるため、ここでの分析の焦点は「いざこざ」言説の構築過程である。子ども間の葛藤を発達的な契機と見る「いざこざ」の概念は、いつごろから幼児教育の中で共有されるようになったのか。このことを明らかにするために、幼児教育関連の専門誌や雑誌等における「いざこざ」概念の生成過程を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)計画当初に参加を予定していた学会がすべてオンライン開催となったことにより調査旅費の使用がなくなったこと、文献検討をインターネット上で公開されている論文を中心に行ったことにより書籍購入費が減少したことが主な理由である。 (使用計画)学会参加旅費、および調査で収集されたデータ分析のための経費として令和3年度の使用計画に組み込み、適切に使用する。
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