わが国では文部科学省が、「幼児期運動指針」で「様々な遊びを中心に毎日合計60分以上楽しく体を動かす」という目標を掲げているものの、幼児の身体活動量の具体的な推奨値が設定されていない。特に有酸素性能力において吉澤は、著書「幼児の有酸素性能能力の発達」の中で(杏林書院、2002)、有酸素性能力(酸素摂取量)は、4歳から成人と比較して、ほぼ変化がなく幼児期から持久的な運動を取り入れることを推奨している。このように幼児期の有酸素性能力は、健康関連指標とより強く関わっていることが示唆されているが、1990年以降、ここ30年間わが国や諸外国においても報告が見あたらない。本研究では、幼児の有酸素性能力、運動能力(質的、量的評価)、日常の身体活動量(歩数、座位行動時間、低強度活動時間、中・高強度活動時間、1回あたりの座位行動持続時間、中・高強度活動持続時間)、生活習慣との関連を明らかにし、「幼児期運動指針」への具体的な推奨値を作成するための基礎研究を展開することが目的であった。 測定した項目は、幼児の①有酸素性能力(酸素摂取量)、②運動能力(質的、量的評価)③日常の身体活動量(歩数、座位活動時間、低強度活動時間、中・高強度活動時間、高強度活動時間、連続した座位活動時間、中・高強度活動時間)、④生活習慣調査(生活習慣、生活環境、睡眠などアンケート調査)を明らかにした。当初の計画では、2020年度に上記の①~④までの、すべての測定項目を測定する予定であった。しかし、2020年度は、新型コロナウイルスの影響を受けて、すべての測定を断念せざるを得なかった。次年度、測定は、一部測定の中止や延期など、頭を悩まされる機会があったものの順調に実施した。今後は、これまで得られたデータ分析を行い、統計的手法を用いて、様々な関連性を検討する。
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