研究課題/領域番号 |
20K13967
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
杉浦 由佳 (白川由佳) 一橋大学, 森有礼高等教育国際流動化機構, 日本学術振興会特別研究員(RPD) (50750402)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | コミュニケーション行動 / 脳波計測 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、幼児のコミュニケーション行動を促進させる育児支援環境の構築である。本研究では、(1)同齢の幼児間の相互交渉経験がもたらす行動面の特徴を数値化して特定すること、(2)こうした経験の影響が及ぶ脳領域・神経伝達物質を明らかにすること、(3)他児との関わりの少ない子どもを対象に、介入トレーニングを行い、介入前後での行動面・神経系の変化を明らかにすることによって、生物学的根拠に基づいた支援環境の構築を目指している。 令和3年度は、上記(1)および(2)について取り組み、①相互交渉の経験有無に伴う、コミュニケーション行動の差異を定量的に判別可能な行動解析系の構築と②脳波計測による神経基板解析へ向けた実験条件の設定を目標とした。 ①については、新型コロナウィルス感染症対策の観点から、他者と密に接触する可能性のある環境設定は回避する必要があるため、欧州のガイドライン等を参照し、感染症対策を講じた上での評価方法の開発を進めた。通常とは異なる環境の影響(例:マスク着用による顔認知への影響、コミュニケーション時の言語発話音の不明瞭さ)について文献調査から明らかにした上で、それらの影響が最小限となるような評価方法の開発と試作を繰り返した。 ②については、研究代表者の所属研究機関の変更と感染症の影響により、当初計画していたMRI/MRSによる検討がより困難な状況となったことから、令和3年度は脳波計測による神経基盤検討に取り組んだ。新型コロナウィルス感染症の影響も大きく、積極的な被験者実験の遂行は困難ではあったが、実験環境の構築と少人数ではあるが成人を対象とした被験者実験を実施した。実験条件の確定には被験者数が不十分であるため、令和4年度において引き続き検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和2年度より引き続き、本年度においても、新型コロナウィルス感染症の影響が大きく、主に被験者を対象とした実験が予定通り遂行できなかった。そのため、現在までの進捗状況は遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
行動定量解析系の構築は、本研究において重要な基盤となることから、十分な実験および検討を要する。令和3年度において、感染症対策を講じた上での評価方法の開発を進めたことから、令和4年度では、被験者を対象とした検証実験を行い、改良した動解析系の確立を目指す。また、神経基盤解析実験においては、当初計画のMRI/MRSによる検討も可能な状況となれば実施を考えているが、協力実験施設の方針に依存することから、引き続き脳波計測による検討も並行し行う。 また、介入研究については当初の計画通り、定量行動解析系の構築を終え、神経基盤検討のデータ収集・解析が一定程度達成できた時点での開始を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は、当初の計画では実験被験者に対する謝金や実験補助者に対する人件費を主に計上していた。しかし、新型コロナウィルス感染症拡大に伴い、被験者を対象とした実験が不可能となったために、それらの経費および実験実施のために必要な消耗品類の購入費について未使用となった。また、研究成果の発表のために国内学会の参加を計画していたが、計画通りの実験遂行が困難となったことにより、関連する旅費等の支出がなくなった。以上のことから次年度使用額が生じた。 次年度となる令和4年度では、遅れが生じている、行動実験および神経基盤解析実験ともに、被験者を対象とした実験の遂行を計画しており、主として実験被験者謝金や実験補助者に対する人件費、実験用消耗物品費を今回生じた次年度使用額および令和4年度請求額を使用する。また、国内学会発表および英文論文投稿を計画しているため、それらにかかる経費を計上する。さらに、実験実施場所の確保のための設備使用費を計上予定である。
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