メディア教育学者デビット・バッキンガムが近著『メディア教育宣言』で述べた、経験主義の国イギリスにおける「教授学的戦略」のダイナミズムに沿い、我が国の熟達した現職教員によるメディア教材を活用したパイロット授業を価値づけ、小学校から中学校への学習を架橋する国語科メディア・エデュケーションの可能性と課題を明らかにした。 具体的には「読むこと(テキスト分析)」と「書くこと(創造的創作)」および「文脈分析(個別の読み書きの営みを、より広い社会的文脈に位置づけること)」のダイナミズムの中で批評の言葉が育まれるさまを学習者反応分析を通して検討し、研究成果は第75回中国四国教育学会自由研究において報告し、「マルチモーダル・リテラシー学習指導プログラムの開発:小学校高学年におけるメディア教材を活用した国語科実践研究の意義」を『教育学研究紀要』第69巻(CD-ROM版)に発表した。 研究期間全体を通じて、当初の目的に掲げた次の3点の達成度を評価すると、おおむね達成することができたのは次の2点である。すなわち、「1 学習者の日常的言語環境と国語科の授業で学ぶ言語能力を不可分にかかわらせ、高度情報化社会における自律した言語生活者の育成を目指す。」、「2、自らの『読む、書く、話す、聞く、見る、身体表現する』などの日常的な意味生成過程に自覚的な学習者を育む、学習指導理論の構築、その理論に基づく学習指導プログラムの構想と教材開発を試み、パイロット実践を通して現職教諭と研究者の共同研究を実施する。」である。「3、現職教諭と研究者が共同で、学習者実態把握に努めながら実践的に研究を進め、これまでも主要課題であった評価基準を提案し、提案する学習指導プログラムを国語科カリキュラムの中に無理なく位置づける可能性を明らかに提言する。」については、教師の説明言語による評価の意義と課題について論究の余地を残した。
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